異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第238節

 装備を整え、奇襲部隊となる十余名が集まる。数人からなる班が三つあり、その一つの班が俺達だ。
 今作戦の目的はロト陣営と交戦中の魔人達の側面から奇襲をかけ、ロト陣営が攻め込む隙を作る事。そのために俺達に求められる能力は個々の戦闘力だ。この場にいる誰もが、但し俺を除いて、個人で魔人以上の力を持つ者たちばかりだ。
 改めてレオから今回の班ごとの役割が伝えられる。


「私達奇襲部隊は丘を下って敵陣側面まで移動、隊長達が初めに斬り込み、次にAチームが斬り込む。私達は退路を確保するよう行動する。退却指示は隊長、あるいは私が出す。また、退却時は私達が殿を務める」


 今回の作戦で重要なのはどれだけ魔人達にダメージを与え、隊列を乱すかにある。
 側面でチビチビ攻撃するようなことはせず、敵陣の側面から中央にかけて駆け抜けるように奇襲をかけ、離脱すること。俺達突貫野郎Aチームの役割もまた奇襲、特にレオが俺に期待しているのは魔術とも異なる化学兵器による奇襲だ。正直、俺の兵器は敵味方の区別がつかないから、多少のリスクはあることは伝えてあるが。


「では、各自装備の最終確認をしたら出発だ」


 今回、俺の装備は比較的軽装だ。その代わり、本を一冊持ってきた。行ってしまえばイラスト集だが、この一枚一枚がIGとなっており、すぐさま装備を取り出せるようにしている。欠点といえば、この本が使えなくなった時点で俺の装備は一切使えない事だ。一応、緊急策として緊急脱出用としてIGを入れた図面入れを背負っているが、気休めだろう。
 ページの一つ一つに手を突っ込んでみてきちんと取り出せるかを確認する。全て問題なしだ。


「では、出発しよう。念のため、これを羽織ってくれ」


 配られたのは渋柿色に染められたローブだった。どうやらこの世界のカモフラージュ用の装備らしい。特に文句無く身に着ける。こうやって統一されたローブを着ることでなんとなく結束感みたいなものを覚えてしまう。
 丘を静かに上り、見渡すと東には疎らに敵の影があり、それにロイス達魔術部隊や歩兵部隊が対応している。そして、北西には魔人の軍勢がロトやアーサー達と争っている。こちらに比べ、あちらは明々としている。それだけ数がいるってことか。
 俺達奇襲部隊の隊列は前にレオ班、左後方にロナルド班、右後方が俺達Aチームだ。レオのハンドサインによって部隊単位での行動が指示される。本来であれば、そのハンドサインを皆に伝えるのが班長としての俺の役割だが、こういった組織行動はフランの方が慣れているためフランに任せ、俺は周囲警戒に努めている。
 特に大きな問題もなく魔人の軍勢の側面、距離にして百メートル程にまで接近できた。どうやら、俺が燃やし尽くした草原痕には可能な限り踏み入らないようにしているようだ。まぁ軍勢でくれば、俺には狙ってくださいと言っているようにしか見えないしな。そして、目の前のあの軍勢も俺にとってはただの的にしか見えなくなってくる。
 レオのハンドサインにより、ロナルド班の突撃のカウントダウンが始まる。ロナルド班の突撃の後が俺達の番だ。


 ――3、2、1、0!


 ロナルド班が真っ先に飛び込み、魔人達の首を一撃でたぶん刎ねた。百メートルの距離を二秒で詰め、俺の目のピントが合う前に倒したんだ。実際、視認できたとは思っていない。
 魔人達の視線が一挙にロナルド達に注がれたタイミングでレオのハンドサインがカウントダウンを始める。
 俺は三人と視線を交わし、互いに頷く。


 ――3、2、1、0!

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く