異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第236節

「どうしたんだレオ? こんな夜更けに」


「話がある」


 レオにしては珍しく、いつもの笑みを浮かべた表情ではない。


「立ち話で済む話じゃないんだろ? とりあえず、座りなよ」


 お茶を楽しむためにとサニングで買った椅子や机を運び入れ、ちょっとしたリラックスルームに模様替えしている。


「……君は戦争中でもあまり変わらないんだな」


「変わらないって?」


「戦争にもなれば、目に見えて変わる人間が多い。気が立ってイライラしていたり、自らを鼓舞しようと普段は言わないような大見得を張ったり、とにかく平時の状態を保つものは少ない。カズキにはそれが当てはまらないみたいだが」


「そんなことないさ。アイリス、レオにお茶を」


「はい、ただいま用意いたします」


 火を使うためにアイリスは外に向かう。


「さて、本題に入ろう」


 この場には俺とレオの二人きりだ。一応、見張りとしてフランとハリソンに交代で外に居てもらっているが。


「今、この戦場で最も穴だと思われていたこちらの陣営に、魔族は戦力をあまり割いていない状態だ。改めて言うが、この状況を作り出したカズキに感謝する。そこで、こちらに少し余裕ができた。物資にも余裕があり、士気も高い。ここで一つ手を打とうと思っている」


「というと?」


「この戦争において、私達の役目はロト殿下の率いる軍勢が側面から攻撃を受けないように守りを固める事だった。現時点でこの役目は十分に果たされた。逆にこちらに向けられていない戦力がアーサー王女、ロト殿下の軍勢に向けられ、思った以上に拮抗している。あちらは既に大半の魔獣を失い、魔人が表立ってきているため、お二方の陣営に少なくない被害も出始めている。ならば、手が空いている私達が斬り込み、活路を見出すべきだとの結論を出した」


「でも、なんでその話を俺に持ってくるんだ?」


 ここまでの話はクリス陣営が話し合って結論を出したんだろう。俺はその場におらず、寝耳にミミズだ。上司の命令とあれば義理で動きもするが、納得できるかどうかは別の問題だ。


「そこで魔人以上の実力を持つと思った精鋭で魔族軍に手傷を負わせる。そうすると、私達を除けば候補として挙がるのは今武闘大会にて優勝した炎姫だ」


 そういや、武闘大会に優勝して賞品を貰うって話が有耶無耶になってたな。ハンスが暴走なんてしなけりゃ、フランはきちんと表彰されていただろうに。今度、ロトに話を付けないとな。


「つまり、フランを精鋭に加えたいと?」


 本題に戻ろう。


「そして、カズキ。君もだ」


「俺もか? 分かってるだろうけど、ロナルドに負けたんだぞ。魔人以上の実力ったってそんなもんないぞ?」


 正直言って、役者不足な感は否めない。


「君は武闘大会のようなルールに縛られる戦いよりも、こういった実戦。言ってしまえば、なんでも有りの環境の方が強い。そうでなければ、一万もの魔獣を倒した英雄になれるはずもない」


「なんか数が増えてるぞ」


 四捨五入するにしてもサバを読みすぎだろ。


「あの後、数百匹の魔獣の群れが何度か攻めてきては倒れて行ったからな。さて、どうだろうか? カズキには是非、参加してもらいたい」


「確認だけど、別に魔王を倒しに行くわけじゃないんだよな?」


「さすがにそこまで性急な話じゃない。敵陣を切り崩し、混乱した所に他の陣営が攻め入る。そういった筋書きさ。言ってしまえば奇襲だ」


 奇襲……奇襲か……。


「分かった。その話に乗ろう」


「ありがとう。攻め入るタイミングは明日の未明、君の方からも加えたい人間がいれば好きに勧誘してくれて構わない」


 ってことは結局、俺達四人全員ってことになるか。


「では、明日にまた迎えに来る」

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