異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第235節

 陽も沈み、基地内では各所で篝火が焚かれている。
 俺はというと、特にレオ達から声がかかることもなく、昼から夕方にかけて秘密兵器の開発に取り組んでいた。数に限りのある使い捨ての兵器なので、試に使ってみれないのが残念だが、理論上は上手くいくはずだ。
 ちょっと遅めの夕食を摂り、戦場にもかかわらずお茶を楽しんでいる所、北西の方向から凄まじい雄叫びが聞こえてくる。どうやら、ロト陣営が何度目かの襲撃を受けているらしい。
 クリス陣営も昼から今までにかけて三回ほど襲撃を受けたが、その悉くが一戦も交えることなくこの目の前の丘を登ることができずに倒れ伏していき、ゴロゴロと魔石を転がす結果となった。そのため、夕方頃からはアーサー陣営、ロト陣営に戦力が集中し、東側にはポッカリと誰も存在しない焼け野原が広がるだけだった。
 しかし、ガスによる見えない死神も既に薄れ終わった頃だろう。
 魔族は昼夜を問わず活動できる種族との話。これから明け方にかけてが一番つらい。特に夜目が利く魔獣を相手にしては非常に不利だ。夜が明けるまでどう持ちこたえるかがカギとなってくるだろう。
 と、色々考えたりはしていたが、結局の所はあまり悩む必要は無かった。ここで活躍したのがロイス率いる魔術部隊だ。ハリソンやアイリスも使える光を発する魔術。もちろん、魔術部隊も使える。ただし、魔術を使うには魔力が必要で、魔力の回復には時間がかかる。よって、魔術の使用は弾数に限りのある大砲みたいなものだ。もちろん、魔石での補助も可能だが、保有していた魔石の大半を頭数の多いアーサー陣営やロト陣営が持っており、クリス陣営が確保できた魔石は潤沢ではない。だが、それを解決したのが丘の下に転がる魔石達だった。
 この世界において、魔族との争いによる戦果といえばその魔石だ。そして、七千匹の魔獣と後続の魔獣が落とした魔石は形式上は俺の物だが、それを一つ一つ拾うのは面倒だと思った。そこで俺はクリスに取引を持ちかけた。転がっている魔石の所有権を放棄し、ロイス達に自由に使ってもらって構わないという話だ。その対価として、この戦争が終わったらそれ相応の見返りを用意してもらうという物。
 単純に換算すれば魔石一つで銀貨二枚。それが七千個以上ともなれば金貨百四十枚相当だ。それだけ潤沢な魔石があるおかげで、ロイスが率いる魔術部隊は人数こそ少ないものの無尽の魔力を得たに等しい。その結果から夜を恐れず戦うことができた。
 ゲームで言えば魔族はMP回復薬を必ず落とす敵と言える。それなら、魔力が尽きる心配をすることなく魔術を使い続けれるといった具合か。そして、この魔石はそれなりの金と引き換えにできる。故に兵士達の士気も決して低くはない。
 クリス陣営は昼に戦闘らしい戦闘も無かったため、疲労の色は無い。むしろ、対魔族戦に慣れているためか休むべき時に休んだ様子で、夜になってからの方が基地内は活発な印象さえある。


「カズキ、少しいいか?」


 ティーブレイク中、レオが俺の所にわざわざ足を運んできた。

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