異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第233節

「レオ。とりあえず、七千匹の魔獣の大群のほとんどは焼き払ったぞ」


 指令室として使われている石造の建屋に入った直後の開口一番はそんな一言だった。これにはさすがにどよめきが走った。まぁ無理もないか。俺がこの場を離れてから十分ほどしか経っていない。それで七千匹を焼き払ったの一言で片づけているんだから。


「カズキ、ここからも見えたあの赤い柱は?」


「俺の策の副産物みたいなもん。それより、しばらくはあの地域に人を向かわせるなよ。偵察も無しだ」


「ああ、カズキの忠告通りにしている。さて、カズキが稼いでくれた貴重な時間だ。準備を万全に期してくれ」


 戦隊長、副長。支援隊長、副長はそれぞれ敬礼をしてそれぞれの持ち場に向かう。この場に残ったのは俺達四人とクリス、ロイス、ロナルド、レオだ。


「カズキ、ありがとう。君は間違いなくこの戦争における功労者だ」


「そういった世辞は戦争を片づけてからにしてくれ。それより、次はどうする? あの一帯が安全になるまで半日ぐらいかかるぞ?」


「なんで半日もかかるの?」


 レオやロナルドには既に説明しているが、クリスとロイスはちんぷんかんぷんだろう。状況整理のためにも一応、説明した方がいいか。


「今、あの地帯には一酸化炭素や二酸化炭素といった気体が漂っているからな。あそこに近づけば、頭痛・眩暈・吐き気みたいな症状が出て、場合によっては数分で死ぬ」


 俺があまりに簡単そうに言うもんでクリスに至っては受け止めきれていない様子。


「そのなんとかタンソというのはどうやったら消えるのかしら?」


 ロイスも一酸化炭素や二酸化炭素といった概念は知らないみたいだ。


「まぁ時間が経てば薄れる思う。あとは風でも吹かせばどっかに飛んでく」


「ちょっと待って!」


 クリスが慌てた様子で俺の言葉を遮った。


「ここには潮風が吹くわ! こっちは風下、それだと、そのなんとかタンソはこっちに来るんじゃないかしら!?」


 俺もそれに関しては策の準備をする直前に少し頭を捻った。結果から言えば少し調べるだけで大丈夫だという事が分かった。


「例えこっちに来たとしても一酸化炭素は空気より軽く、二酸化炭素は重いから、一酸化炭素は丘を登ってもそのまま上空に向かうし、二酸化炭素は重いため丘を登れない。もし、こちらに入ってきてもその重さから地面を這うように移動するから、あまり関係ない。むしろ、大変なのは魔族軍側で、こっちに攻め入ろうとすれば二酸化炭素に頭を悩ませる事間違いなしだ」


 俺の雑な回答がどこまで伝わったかわからないが、この場にいるフランを除いた全員が分かった様な素振りを見せる。


「主、アタイそのなんとかタンソにやられたのかな。頭痛がしてきた」


「だったらー、ロイスちゃんが介抱してあげるー」


 ルンルン口調のロイス。この口調には俺も頭痛がする。俺も二酸化炭素に当てられたのかもしれない。

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