異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第227節

 片づけも終え、皆はそれぞれ割り当てられた部屋に戻り、俺とアイリスも部屋に戻る。
 電灯を点け、調理器具や食器の類を所定の位置に戻す。


「アイリス、お疲れ様」


「カズキ様もお疲れ様でした」


 にっこりと微笑むアイリスは物凄く可愛い。


「そういや、アイリスはあんまり食べられなかったんじゃないか?」


「いえ、たくさん食べましたよ?」


 目が泳ぐアイリス。


「アイリス、正直に言いなさい」


 命令の意志を持って訊ねてみる。すると、アイリスの額に『祝』の文字が浮かび上がる。


「あまり、食べていません」


「よしよし。それじゃあ、何か用意しようか」


 俺はアイリスの頭を撫でてから現代に移動する。
 一応、小腹が空いた時の非常食としてカップ麺を常備している。栄養的には物足りないが、腹が膨れるだけいいだろう。
 どうでもいいが、俺は赤か緑かで言えば、赤が好きだ。そういえば、山か里かで戦争は聞くが赤か緑かで戦争を聞くことはないな。皆穏健派なんだろうか。
 お湯をカップに注ぎ、五分待機してから異世界に移る。


「お待たせ」


「おかえりなさいカズキ様、それは?」


「これはカップ麺って言って俺の国の簡易食。お湯を入れるだけで食べられるってモノなんだ」


「お湯をかけるだけで?」


「まぁイメージとしては麺を干物にしたものなんだ。だから、お湯をかけると元に戻るって感じ。食べたら分かるさ」


 俺は蓋をはぎ取り、立ち込める蒸気にアイリスが好奇心に目を光らせる。


「さぁどうぞ」


「いただきます」


 アイリスは美味しそうにカップ麺に手を付ける。こっちには面を啜るという文化がないため、どうしても俺から見ればチビチビ食べているように見える。


「カズキ様も食べますか?」


「いや、さすがに食えない」


 実際、俺はそれなりに食べたし、ビールも飲んでいる。


「そういや、アイリスはバリーとかウィリアムとかと話したか?」


「バリーさんとウィリアムさんですか?」


「ああ。二人とも食ったり飲んだりで忙しそうであんまり喋れなかったんだよ」


「そうなんですか。バリーさんとは少しお話ししましたけど、ウィリアムさんとはあまりお話できませんでした。お父様とお話はしていたみたいですが」


「ふーん、そっか。バリーってどんなやつだった?」


「バリーさんはとてもお肉が好きみたいでした。私がフランさんとバリーさんのお肉を焼いていたんですけど、フランさんよりも食べていらっしゃいました」


「それは凄いな」


 屋敷の中でも一番飯を食べるのがフランだ。俺は元々少食だし、ハリソンも大食いってわけじゃない。他の面子は体の体積的にもちんまりしてるから、フランが一番食べるという共通認識が俺達の中にあった。それ以上に食べるというバリーはさすがの巨漢だ。


「それと、カズキ様は若いのにレオ副隊長から認められるなんて凄いって言ったり、うちの隊長もあの若さで平民上がりなのに組長を任せられるのは凄いんだぞって言ってました」


 そういや、親衛隊って貴族とかちょっと偉い家系の坊ちゃんが仕官するようなエリートなんだっけか? そこに平民のジョンがいるってことはやっぱり、それなりに才能があるか努力してるってことなんだよな。わざわざ勉強するために兵士になるってぐらいだし、情熱も本物なんだろう。
 そういう所に忠誠を誓っているというか、信頼しているって感じか。
 というか、石組って全員平民上がりなんじゃないか? いや、ウィリアムがどうかは知らないけど。


 もしかして、レオが気を使ってくれたのかな。

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