異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第221節

 俺は大学に向かった。
 こんな時間でも研究をしている人間がいるようで、研究棟では明かりがついている。
 本当なら、あそこで研究をする予定だったんだが、再来年こそは……いや、無理か。
 俺自身、半分は諦めている。それでも、一縷の望みを抱いて最後までしがみ付こうとした。でも、今ではそこまで固執する必要がないかもと思っている。
 俺は変装した上で研究棟に忍び込み、薬品庫に向かう。もちろん鍵はかけられているが、紙が通る隙間さえあれば悠々と通り抜けることができる。そして、施錠された薬品棚の隙間にIGを滑り込ませ、薬品の中でも劇薬の部類に入るそれらをこっそりと持ち去り、液体窒素が保管されているタンクに仕掛けをする。
 これはもう確実に犯罪だ。窃盗に器物破損、不法侵入、追及すればもっとか。
 ……最悪、あっちの世界に移住してしまってもいいかもしれないな。いや、そんなことを考えるのは戦争が終わってからにしよう。
 俺はそれらを自宅に持ち帰り、緊張を解いた。
 これで後には引けない。
 劇薬を手に異世界に渡ると、アイリスはまだ起きていた。既に日付は回っているのに律儀に俺の帰りを待っていたらしい。


「カズキ様、おかえりなさい」


「ああ、ただいま」


 俺はベッド、らしきもの、に座る。


「カズキ様、今日は一緒に寝てもいいですか?」


「ん? ああ、そうだな」


 掛け毛布を用意していないためか、少し肌寒いか? アイリスのために敷きタオルを用意したけど二人並んでタオルをかければ少しはマシになるか。
 アイリス用のベッドを地中に返し、俺のベッドを拡張する。そこにアイリスを横たわらせ、俺も横になり、タオルケットをかける。
 さすがに昼間から深夜まで動き通しで一度横になるともう動けそうにないほど疲れを自覚してきた。


「カズキ様?」


「どうした?」


 声を出すのが億劫になる程疲れているみたいだ。もうアイリスの顔を見ていられず、目を閉じてしまう。


「あの……ジェイドさんのことなんですが……」


「ジェイドがどうかしたか?」


「昼間、クリスティーナ王女とご一緒だったみたいですが……どういうことなんですか?」


「ああ……まぁ色々あったんだよ」


「色々?」


「かいつまんで話すと、ジェイドが夜這いに来たけど、俺が追い返したら城に戻ったんだ」


「よ、夜這いですか?」


「ああ」


 寝返りをうちつつアイリスを抱き寄せると、柔らかくて良い匂いがする。


「その……カズキ様はそういう事に……興味がないのでしょうか?」


「ないわけじゃないけど……なんだろうな。言葉にできないや」


 俺は考えることが面倒くさくなって寝ることにした。


「もう寝るぞ。アイリス」


「はい。おやすみなさい」

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