異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第220節

 俺は現代に戻り、とにかく俺の持てる限りの知識を総動員した。それも現代知識のフィクション知識をかけあわせた最強の兵器だ。
 ラノベにおいて頻繁に出てくる範囲殲滅兵器に『粉塵爆発』と呼ばれるものがある。風が無い空間に舞う可燃性物質に引火することで超加速の燃焼をすることで爆発を起こす仕組みだ。そして、その可燃物質によって爆発の危険性は増す。そこに現代知識の中でも特に強力な可燃物質として挙げられるのがアルミニウム粉末だ。ただし、粉塵爆発を成立させるためにはいくつかの条件がいる。まず一つは風の無い空間であること。これは風属性の魔術で風を止める事で条件はクリアできる。これのメリットは周囲の酸素を受け取ることができる事だ。あっちの世界では比較的気圧が低いが、なんとかなるだろう。もう一つはアルミニウム粉末を爆発させるためには一立米(=1立方メートル)あたり30グラムが必要らしい。こっちはもう単純に買って粉末にするしかない。
 これはあくまで戦略兵器だ。勝利条件は結局魔王を倒すしかない。魔王を倒すためにはもっと直接的な武器が必要だ。
 次に参考にしたのがゾンビゲーム作品におけるホームセンター武器だ。色々な武器の候補はあったが、柄が木製だったりするとすぐに折られる可能性があった。そこで武器の条件として全身が金属であることを条件とした結果、案の定というべきかバールに行きついた。
 全身が金属であり、殺傷能力もある。異世界に挑む武器に形容するにしては的外れだが現実的な武器だ。
 もっと言えば拳銃のような武器があればいいんだが……。
 それも無い物ねだりか。日本で手に入れるのは無理だろうし、裏ワザが無いわけでもないがそれをするにしても時間が無い。
 今できることをするしかない。


 ――いや、違う。


 もしかしたら、俺は文字通り、命を懸ける戦いをするかもしれないんだ。俺に足りないのは、日常から一線を超える事だ。それを超えれば、俺に取れる選択肢は更に増える。でも、それをすれば俺はこの世界で綺麗な体ではいられなくなる。たぶん、手段を選ばないってことは犯罪をすることになるだろう。それを俺自身が許容できるかどうかって事なんだ。俺ができる手段はIG頼りだ。きっと警察だって立件できないだろう。だから、疑われはしても罪に問われることはない。なら、あとは俺の気持ちの問題なんだ。


 ――やるしかない。


 俺が憧れてきた主人公達もこうやって岐路に立たされていた。その時、彼らが思った事は何だったかだ。彼らは彼ら自身よりも守る人間の顔を思い浮かべていた。そして俺にも守りたいと思える人間がいる。あいつらを守れるのが俺しかいなくて、俺の保身があいつらを救えなかった時、俺は俺を許せないだろう。


 ――俺は俺のためにあいつらを守るって決めたんだ。


「こういうのを覚醒って言うのかね」


 いや、覚醒って言うより覚悟だな。

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