異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第219節

「カズキ様。夕食の準備ができました」


 俺はとっさにクララの魔宝石をポケットに入れて立ち上がる。


「ああ、分かった。すぐ行く」


 俺は重いメイスやリュックは置き、短剣だけを装備した軽装で外に出る。
 すっかり日は沈み、周囲は闇に染まり、その中で焚火を囲む三人だけが浮かび上がっている。


「待たせて悪かったな」


 俺は三人に近寄り、座る。どうやら石材の残りでかまどを作ったようだ。


「こちらがカズキ様の分です」


「ああ、ありがとう」


 調理器具も限られ、鍋一つしか買い揃えてなかったので今日は肉と野菜のスープだ。もちろん、調味料の類があるためこの世界の並の料理よりは美味しい。


「今日は皆お疲れ様。建設も順調だし、明日は本格的に大量の人間を収容できる大部屋を作ろうと思う」


 俺はスープを食べ終えたタイミングで明日のことについて切り出した。


「カズキ様、少しいいですか?」


「なんだ? ハリソン」


 ハリソンも食事を終えたようだ。


「わずかな時間にこのような堅牢な基地を作れたことは凄いと思いますが、これをあと1000人分を作るともなるとさすがに人手が足りないのでは?」


「そうだな。俺もそこらへんはちょっとギリギリかなーって思ってる。明日の明け方から日暮れまで建設を行って間に合うかどうか。まぁだからこそ大部屋を作るってのが苦肉の策なんだけどな」


 ハリソンは俺の言葉を受け、少し考えてから口を開く。


「カズキ様、ここはひとつ人手を増やしたほうがいいかと」


「まぁそうだよなぁ。人手が足りないなら、人手を増やすのが手っ取り早いし」


「サニングからここまでの道中、カズキ様の魔術により走りやすい轍が出来ています。明日の朝に手配すれば昼前には到着するでしょう。そこから急げば間に合うと思います」


「……そうだな」


 本当なら俺らだけで造って見せたかったが、意地を張っても仕方がないか。


「分かった。明日の朝、レオに話をつけてくる」


「はい。カズキ様が不在の間でも私達だけでも作業は進められるでしょうから、安心してください」


 こういう時は率先して動いてくれるハリソンがありがたい。


「ああ。それじゃ、明日はハリソンに任せようか」


 俺は後の事をハリソンに任せると決め、席を立った。
 仮設基地に戻り、休もうとするがさすがに四角い空間に家具らしい家具も無く、ただただ殺風景な伽藍堂。俺は手慰みに現代の俺の天井に付いている電灯をこの仮設基地の天井に付け、明かりを確保し、土を盛り上げて段差を作り、現代からバスタオルを持ってきて敷く。これで多少はマシになるだろう。ついでにアイリスの分も作ってやる。


「カズキ様、なにをなさっているのですか?」


「ああ。ちょっと簡易ベッドを作ってたんだよ。どうにも地べたで寝るってのに抵抗が合ってな」


「そういうことでしたか」


「俺はこっち、アイリスはそっちな」


 入口から見て左が俺でアイリスが右だ。


「こっちですね」


 アイリスは自分のベッドの近くにさっきまで使っていた食器を丁寧に扱い起き並べる。


「アイリス。ちょっと待て」


 俺は魔術を使ってすぐに食器を置くための棚を作る。食器の類を床に置くのも抵抗があったからだ。


「そこに並べてくれ。食器を床に置くのは好きじゃないから」


「わざわざありがとうございます」


 アイリスは食器を棚に並べなおす。


「しっかし、今日も疲れたな」


 俺は簡易ベッドに横になりながらアイリスを眺める。こうやって見てみると、幼な妻って感じがする。いや、幼すぎるか。あのお尻なんて小さすぎるし、胸なんか平らだ。こうしている今でもアンバーと変わらない歳のように感じる。タイン人というのはあんなに幼い仕草をするものなのだろうか? でも、純血のタイン人のロージーは大人らしい仕草を見せる事もある。


「アイリス、こっちに来い」


「はい。なんでしょうか?」


 俺はアイリスの腕をつかみ、くるりと半回転させて俺の膝の上に座らせる。やっぱり華奢で軽い小さな女の子だ。手首なんてこんなに細いし肌だって滑らかだ。


「アイリス、この生活は楽しいか?」


「楽しい……ですか?」


「ああ。俺の奴隷となってそれなりの時間が経ったけど、これからもずっとこんな毎日が送れたらいいなって思うって事」


「はい。それはもう、毎日が楽しいですよ!」


「そっか」


 俺はアイリスの髪を撫でる。たまにシャワーを浴びせているおかげか、シャンプーの残り香がする。
 よし、元気を貰った。


「ちょっとでかけてくるよ」


「こんな時間にですか?」


「ああ。ちょっと武器の補充をな」


「武器ですか? それなら、こんな立派な武器があるじゃないですか」


 アイリスは俺の超重量武器のメイスを指さす。


「他にも必要になったんだ。まぁ今日中には戻ってくるから安心してくれ。それじゃ、行ってくる」


「はい。行ってらっしゃいませ」

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