異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第218節

「私の知る限りだけれどいいかしら?」


「ああ。頼む」


「そうね。まずは名前を教えてあげるわ。私達の王は周囲の王から悦楽の王と呼ばれていて本人もその呼称が気に入ってからはその名を使っているけれど、そう呼ばれる前はジョリーという名を自分につけたらしいわ」


「じゃあ、悦楽の王ってのが二つ名みたいなもんで本名はジョリーっていうのか?」


「そうね。まぁその名前も自称なのだけれど」


「で、ジョリーって強いのか?」


「戦闘能力の強弱で言えば間違いなく強いわ。あのフランって女の子でも絶対に勝てないわ」


「……マジか?」


「ええ。少なくとも一対一で勝てる存在は人族に存在しないと言い切ってしまってもいいわ」


「それって何かカラクリがあるのか? その言い方だと戦術とか魔術とかって問題以前に思えるけど」


「ええ。察しがいいのね」


「そりゃあ、魔王って言われてるぐらいだから単純に魔人より強いってだけじゃないだろう?」


「そうよ。私達の王だけじゃなく、他の王も共通している点として吸魔の力と消撃の力ね」


 翻訳の魔宝石のおかげでなんとなくニュアンスは分かるけど……。


「吸魔の力は魔力を吸収する力なの。だから、魔力を基にした魔術を魔王に打ち込んでも吸収されるだけってこと」


「吸魔ってこの吸魔石と何か関係あるのか?」


 俺はふとニュアンスの感じからして吸魔石に何か関係があるのかと思った。


「ええ。おそらく昔に倒された魔王の欠片かもしれないわね」


「魔王の核って吸魔石ってことか?」


「そう単純でもないけれど、性質としては近いわ。カズキが持つ吸魔石の力は魔石から魔力を取り込む程度の能力。それを強くしたものが魔術すら魔力に分解して吸収してしまう。そう認識して間違いないわ」


「じゃあ、消撃の力ってのは何だ?」


「魔術によらない攻撃。例えば、剣による斬撃や棍棒による打撃そういった攻撃を防ぐ力。そうね……カズキが持つ物理障壁の魔宝石の力を常に使っているって所かしら」


「……それって勝てなくないか?」


「そうね。更に悦楽の王はもう一つ力を持っているの。他の魔王も少し性質が違うけれど似た能力に震撼の力」


「震撼の力?」


「簡単に言うと感情を揺さぶる能力よ。喜怒哀楽、その他の感情を強引に引き出す力。悦楽の王の二つ名はそこから来ているのだけれど、相手に喜びの感情を無理矢理与えるの」


「……それってどういう意味だ?」


「例えば……悦楽の王とあのフランって子が戦うとする。そして、悦楽の王がフランに傷を負わせるとするでしょう? その結果としてあの子が無理矢理に喜びの感情を引き出させるとする。するとどうなると思う?」


「何かが厚くなりそうな気がした」


 いや、そんな冗談を言ってる場合じゃない。


「それって詰まる所、自分から嬲られるようになるんじゃないのか?」


「そういう事よ。でも、カズキにはこの能力は効かない。何故なら魔力を持たないから」


「それって……」


 ロトもそんな力を使っていた。あの時は怒りって感情を無理やり引き出した感じだった。あの時も俺は確かに周囲に浮いてしまう程に全然感情が動いていなかった。


「だから、カズキは魔王の震撼の力を無効化できるの」


「……でも、結局は魔術も物理攻撃も使えないんじゃ結局、勝てないんじゃねぇか?」


「ええ。この世界にしかない魔術なら聞かないでしょうけど、カズキの世界の物は魔力で作られた物ではない可能性があるわ。確証は無いけれど、魔王の持つ消撃の力は魔力で構成された物体が生じる攻撃を防いでいる可能性があるわ。つまり、魔力で構成されていない――カズキの世界の武器なら通じるかもしれない」


「じゃあ、それをフランに持たせれば……」


「言ったでしょう? 震撼の力がある限り、この世界の人間は万全の力で戦うことができないわ。魔力による強化もできない生身の人間が戦うよりも、生身でシーク人より強いカズキが戦った方が何倍も勝率があるわ」


「それって……」


「ええ。あなたが救国の英雄になるってことよ」

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