異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第217節

 俺はまず建物の輪郭を定めるため、地面に溝を掘り、その溝にそって石を敷き詰める。室内に見立てた床は四方五メートル程の正方形に区分けしている。まぁ五メートルは正確に測ったわけではなく俺の身長を三つ分だけど。
 その敷き詰めた石材にアイリスが粘土を塗り、その上に俺が石材を乗せ、その接合部の粘土をフランが加熱する。これを繰り返し、高さ三メートル程の壁を作る。また、屋根は台形に切り揃えた石材をアーチ状に接合し、それを壁の上部に乗っける。強度的にはいまいちかもしれないが、即席の基地という視点で見れば十分だろう。
 そうやって同じ造りの物をもう一つ作ったところで日が暮れた。


「驚いたな。まさか、こんな楽に建物が作れるなんて思わなかった。アタイは冒険者稼業も長かったから、てっきり今日は野宿になるだろうと思っていたんだが」


「まぁ突貫工事だけどね。風雨を凌げる程度のレベルっていうんならもっと簡素に作る方法もあったけど、まがりなりにも基地だからね。風雨どころか矢が降ったって大丈夫なレベルを目標にしたし、並みの魔術だって丈夫な石材なら簡単には崩せないと思う」


「さすがアタイの主だ」


「じゃあ、ちょっと休憩にしようか。そっちの建物はハリソンとフランで使ってくれ。こっちの建物は俺とアイリスで使わせてもらう」


「なら、アタイは休憩の前に薪でも拾ってくるかな」


「それなら、私も同行しよう。女性に夜の一人歩きをさせるわけにはいかないからな」


「お。アタイを女性扱いしてくれるのかい? 嬉しいね」


 ハリソンとフランは軽口を叩きながら近くの林に向かった。


「じゃあ、アイリス。俺はちょっと夕食の買い出しに行ってくるから、この基地の見張りをしててくれ。あと、この建物には誰も近づけるな。ただし、魔人が表れて一人で対処できないと思ったらすぐにハリソンとフランを呼びに行け。いいな?」


「はい!」


「それじゃ行ってくる」


 俺はIGを使って現代に移動する。
 こっちもすっかり日が暮れており、時計は飯時を指していた。
 俺は肉体労働の疲れを癒すため、キンキンに冷えた麦茶をコップ三杯を飲み干してから買い物に向かう。
 大量に買うつもりはないから、近所のスーパーで安い食器や調理道具と肉と野菜と果物を買い込んで異世界に戻る。


「おかえりなさい、カズキ様」


「ああ、ただいま。二人はもう戻ってきてるか?」


「はい。今は焚火とかまどの準備をしてくれています」


 そこらへんはさすがは元冒険者のフラン。俺から何か指示をする前に自分から動いてくれてる。


「じゃあ、飯はアイリスが調理してくれ。道具と食材はこれな」


 どうせ数日も使得ればいいと思ったもので安物だが、こっちの世界ではそれなりに使い勝手はいいはずだ。


「ありがとうございます!」


「んじゃ、あとは任せた」


 さすがに疲れた俺は床、といっても踏みならしたように固くした地面、に寝転がり夕食ができるのを待つ。


「カズキ、ちょっといいかしら?」


 誰の声かと思えばクララだった。


「どうかしたのか?」


「あなたって、いったいどこからきたの?」


「どこって――」


「さっきまで居たあそこがカズキの故郷?」


 ――――そういや、俺はこいつの魔宝石を持って現代に戻ったんだった。


「見たことがない物ばかりだし、まるで私の知らない世界だった。あそこはこの世界のどこにあるの?」


「……まぁそこまで知られちゃ仕方ないか」


 俺は観念してクララに俺の能力の事を話した。もちろん、契約として秘密を守ると命令したうえでだ。


「普通ではないとは思っていたけれど、別の世界の人間だったのね。それも、魔法が無い世界だなんて」


「ああ。だから、俺は魔力が無いし、魔術も使えない。魔石と魔宝石がなけりゃただの力の強いだけの人間なんだよ」


「……だから、私の声はその翻訳の魔宝石を経由しないと届かないわけね」


「その口ぶりだと、普通なら魔宝石無しで会話ができるのか?」


「そうよ。あなたはあの世界だとその耳飾りを外していたから、私の声は一切届かなかったのよ」


「あっちの世界じゃ、俺みたいな人間が耳飾りなんて奇抜すぎて目立っちまうからな」


 地味な身なりをしている人間が耳飾りしてたら違和感を強く覚えるだろうしな。


「……それにしても魔力を持たない人間か……」


「魔力を持たないってやっぱりおかしいのか?」


「そうよ。この世にある全ての物は魔力を元にしているの。でも、カズキは違う」


「でも、大差ないだろう? 同じ空気吸って、同じ飯食って、同じように動いてるし」


「違うの……私達魔人にとって……いえ、魔王にとって魔力を持たない人間は危険視されるの」


「それってどういう意味だ? というか、魔王についてもっと教えてくれ」

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