異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第216節

「まず資源の確保から始めよう。俺は石材の調達に行く。三人は粘土を探してきてくれ。粘土を見つけたら、ハリソンは上空に強い光を発する魔術を使ってくれ」


「分かりました」


「もし、粘土を見つけられなかったら空が夕焼けになる頃には戻ってきてくれ」


「カズキ様はお一人で大丈夫ですか?」


 俺の傍を離れるのが心配なのか、アイリスが確認するように訊いてきた。


「ああ。岩を切り出すには魔術の方が都合いいしな。それに建築用の図面は俺の頭の中にしかないから、どれぐらいの大きさや形の石が必要か三人には分からないからな」


「カズキ様がそうおっしゃるなら……」


「とりあえず、ここに目印を立てておく」


 土を寄せ集め、高さ三メートルほどの直方体を作り出した。


「時間になったら戻ってきてくれ」


 俺の言葉に了承した三人を見送ってから、俺は建設予定地の近くに資材置き場としての囲いを作り、そこにIGを設置してから岩石地帯に向かう。
 それほど広くない林を抜けた先に白みを帯びた岩肌を持つ小高い山があり、かなり足場が悪い。
 俺は石を切り出す前にそれなりに形の良い石を見繕ってはIGを通して石材を輸送していく。こういう時は自分の力が強くなったことと筋力増強の魔宝石の力が有りがたい。
 周辺に手頃な石が無くなってから地属性の魔宝石を使い、石を切り出していく。石を構成している粒子の結合をある面を基準にして切り離すイメージで次々にバスケットボール大の大きさの石を切り出し、それを運ぶ。そして気が付けば総計何百トンもの石を運び終わり、そろそろ腰を下して休憩しようとしたところ、かなり離れた場所で眩い光が発したのを目にした。
 俺は下しかけた腰を上げ、光の方向に進んだ。
 直線にして徒歩10分程の場所に川があった。それに沿って更に5分程下ると3人を見つけた。


「カズキ様!」


 俺を見つけたアイリスが笑顔で駆け寄ってくる。


「粘土は見つかったみたいだな」


 俺はリュックから一口サイズのチョコを数個取り出してアイリスに手渡す。


「ちょっと調べるから、三人ともこれでも食べて休憩してて」


 三人に休むよう言ってから粘土を手に取ってみる。川の水を吸ってかなりベチャベチャになっているが、水分を適当に拭い、捏ねてみると市販の粘土程ではないが確かに粘土らしくムニュムニュとしている。
 試しに火属性の魔宝石で加熱してみると硬化性も確認できた。あとはこれを必要な分量だけ運び出せばいい。


「よし、それじゃあ次の命令だ」


 休んでいる三人に対し、新たな命を下す。


「これから、基地を建設するんだが、石材の方は既にそれなりの量を用意できた。これから、石材と粘土を使って建物を作る。そこでそれぞれに役割を与える。ハリソンは粘土を捏ねる係、アイリスは粘土を塗る係、俺は石材を積む係。フランは塗った粘土を乾かす係だ。もうすぐ日が暮れるだろうから、完全な暗闇になる前に俺達が休憩できる程度の所まで進めるぞ」


 そこで腰を下ろして休憩していたハリソンが質問してきた。


「カズキ様、粘土はどうやって運び出しますか?」


「あー、どうしようか」


 IGを使う所はあまり見られたくない。それに粘土は水分を含んでいてIGとして使っている紙がすぐに痛みそうで嫌なんだよな。


「仕方ない。少しもったいない使い方だけど、考える時間も惜しい」


 俺は地属性の魔術で粘土を寄り集め、直径一メートル程の球体に纏めてから宙に浮かせる。俺は自分の魔力を使っているわけではないので、どれだけの魔力が消費されているのか肌身では感じれないが、それ相応の魔力を消費しているんだろう。


「とりあえず、これを運ぶ。足りなかったらまた後で俺が調達する」


「これだけの量があれば粘土に困ることはなさそうですね」


「まぁ一般住居を建てるならこれで足りるんだろうけど、俺達は基地を作ろうとしているわけだしな。まぁ足りないだろうさ。今日は俺達の寝床を作るつもりでいいさ」


 俺達は再び建設予定地に戻った。道中、乱立した木々に邪魔され、粘土を運びにくかったが、フランに木を切ってもらい、滞りなく運び出すことができた。
 地面に粘土が丸々入る程の穴を地属性の魔術により掘り、その穴の表面に粘土を塗って火属性により乾燥させる。その中に粘土の塊を入れる。


「とりあえず粘土はここに置いておこう。ハリソンはこの塊から必要な量だけ捏ねてくれ。それをアイリスが塗るって形で」


「主、もしかしてあそこで山をなしている石材は全て主が?」


 フランが信じられないものを見るように目をパチクリとしている。


「ああ。あれだけあれば当分、石材には困らないだろう?」


「……そうですね」


「んじゃ、とりかかるぞー。フランは適宜、炎を操って粘土を乾かしてくれ」


 俺達は建築を始めた。床は土を固める程度でいいから重要なのは壁だ。とにかく壁を作る。

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