異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第214節

 次はクリスだ。
 三人を連れ、適当にクリスの親衛隊であろう兵士を捕まえ、クリスの居所を聞き出し、その場所に向かう。すると、ある扉の前でクリス親衛隊の兵士が佇んでいる。どうやら、その部屋に誰も通さないようにと守備しているらしい。


「おつかれさん」


「おお、カンザキ殿ですか」


 見ず知らずの兵士にまで俺の顔は伝わっている……というより、俺の髪を見ているあたり、特徴と合致しているから俺だと判断したって所か。


「中にクリス様はいらっしゃいますか」


「はい。少々お待ちください」


 兵士は一言断ってから中に入り、数十秒後に出てきて、俺を中に入れた。


「カズキさん、ようこそいらっしゃいました」


 中にはクリス、ロナルド、レオ、キム、ジェイドの五名がいた。


「今日はどういった御用ですか?」


「分かっていて聞くだなんて意地悪ね。もちろん、魔王の件よ」


 俺は入り口から一番近い席に座る。そういや、この世界でも上座、下座みたいな概念はあるのだろうか。一番奥の席、上座に当たるところにクリスが座っているから少し気になったけど。
 アイリス達はここでも壁際で待機する。


「まぁ時間もないし、他に聞き耳を立てる人間もいないわけだし、不敬を承知で話させてもらうけど、俺は何をしたらいい? 何をさせたい?」


 テーブルに肘を付き、手を組んでクリスに問うた。


「君には我らと共に戦場に来てもらいたい」


 俺の問いにはロナルドが返してきた。


「まぁ一応肩書はクリス親衛隊に所属してるし、レオの直属の部下って扱いだから、それは引き受けるよ」


 俺の返答を聞き、レオが話を進める。


「私はカズキに工兵として動いてもらいたい。基本的には私達から出す指令に対してカズキの未知の知識や技術、道具を使って応えてもらう形になるだろう。具体的には陣地の構築や橋梁の建設等を頼みたい」


「要はものづくりってことか」


「そう取ってもらって構わない。対外的には私が直接指揮する小隊という扱いになるだろうが、実質的な指揮権はカズキに委譲する。小隊には是非、炎姫えんきに参加してもらいたい」


「炎姫?」


「カズキはまだ知らないのですか? フランさんの新しい二つ名ですよ。冒険者を辞め、傭兵となったフランさんが武闘大会中に炎のドレスを身に纏って戦った姿からそう言われ始めたそうですよ」


 俺はちらりとフランを見たが、初耳だといった風だ。


「まぁいいや。フランはもちろん連れていくつもりだ。それと、ハリソンとアイリスも連れていく」


「そうですね。アイリスさんの実力の一端は垣間見ましたし、その父親のハリソンさんも実力者であるので妥当だと思います」


「なら決まりだ。俺ら四人で小隊を組むぜ」


「では、小隊名を決めましょうか。何か希望はありますか?」


「小隊名とかいるのか?」


「隊を管理する上で名前は重要ですよ。何もなければこちらから付けますが」


 俺は少し考えてから小隊名を決めた。


「突貫野郎Aチームで」


「と、とっかんやろうえーちーむ?」


 俺はあの伝説的なチームの名前にあやかるため、少し文字ったチーム名にしてみた。


「略称はAチームで」


「分かった。では、Aチーム。これから君達に指令を与える。そちらの三人もこちらに来てくれ」


 そういってレオはアイリス達を呼び寄せた。


「まずはこれを見てくれ」


 レオはそういって大きな羊皮紙に描かれた地図を広げて見せた。
 この世界でもこれだけ良質な地図があるのかと少し感心した。


「ここがサニング、そしてここから北上すると海がある」


「あ、少し写真撮っていい?」


「写真?」


「まぁ簡単に言うと複製するってことなんだけど、いいかな?」


「クリス様、いかがいたしましょう」


「許可してあげなさい。今は機密を守る事より大事なことがあるはずよ」


「ありがとう」


 俺はクリスに礼を言って写真を撮る。


「コピーが必要なら、コピーを取ってくるけどいる?」


「コピー? 複製のことか?」


「まぁそんな感じ。少し時間がかかるけど」


「そうか。なら、時間があるときに頼む。それより、作戦の話を進めるがいいかな?」


「ああ。アイリス、メモを頼む」


「はい」


 アイリスはボールペンとメモ帳を取り出し、書記を務めてもらう。


「ではまず、Aチームにはここから北上し、この盆地の手前の丘の東側に我らの基地を作ってもらいたい。あまり時間はないため、質より量を重視してほしい。我ら親衛隊の総員は3000人。防衛に1000人を残すため、戦場に向かうのは2000人だ。少なくともその半分の1000人を収容できる規模の
基地を作ってほしい」


「費用と仕様と納期は?」


「費用? 仕様? 納期?」


 大学で口を酸っぱくして言われた大事な要素だ。


「どれだけの金を使っていいのか、どれだけの能力を持った基地がいいのか、いつまでに作ればいいのかってこと」


「なるほど……。ではこれを」


 そういってレオが俺に手渡してきたのは俺がまだ見たことが無い一枚の硬貨だった。


「これはエルグ皇貨といって金貨100枚と同価値の物だ。今回、我らクリスティーナ様親衛隊の軍事費の約一割に相当する」


「こんなものがあったのか」


 俺はまじまじと手元の硬貨を見てみる。銀の様な白色の金属光沢を持っているが、銀とも違う。


「普通の店では使えないが、商会でなら取り扱ってくれるだろう」


「なら、ありがたく」


 俺は財布に硬貨を入れて話を進める。


「費用はとりあえず金貨100枚以内ってことで。それで、仕様と納期は?」


「仕様か……。基地としては物資の貯蔵と兵の休息は必須だ。納期の方だが、できるだけ早い方がいい。そうだな今日、明日……明後日の朝までには完成させてほしい。必要なら、こちらから兵を出す。出来そうだろうか?」


「そうだな……」


 基地の建設ともなれば建築資材が必要だ。その気になればIGで輸送すればいいが、規模が規模だ。可能なら現地調達が望ましい。


「レオ、この丘の近辺で石材が取れる場所と粘土質の地層は無いか?」


「それなら、私達が基地にしようとしている地点から更に東に向かったところ石材を採掘できそうな岩石地帯があると昔、聞いたことがある」


 なら、そこを目指す必要があるか。


「粘土の方はどうだ?」


「粘土ですか……おそらく、その岩石地帯の周辺にある川を下った所に粘土が取れる地帯があるかと思います」


「分かった」


 条件は揃った。資材の調達、建築方法、建築図面が頭の中で次々に湧き出てくる。凄く調子がいい自分を自覚する。


「アイリス、ハリソン、フラン。これから忙しくなるぞ!」


 忙しくなると言いながらも俺は笑った。なんだかんだ、金儲けも好きだが、何かを作るってのは楽しい。

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