異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第213節

 俺達四人はロトの部下が用意してくれた馬車に乗り込み、登城する。わりと良い馬車を用意してくれたみたいであまり尻は痛くならなかった。
 王城敷地内に入るとやはりというべきか、兵士達が慌ただしそうにしていたり、身なりの良い商人風の男達が馬車を率いて物資を運び入れている。商人が雇っている肉体労働者の数が足りないのか、兵士達まで荷卸しを手伝っている有様だ。
 そんな忙しそうな彼らを後目に馬車を降り、案内されるがままに城内を移動する。
 城内でも少々慌ただしい雰囲気が漂っているようだ。
 兵士は扉の前で立ち止まり、俺達に少しだけ待つように告げてから中に入り、数十秒ほどが経った後に室内に入るよう促される。


「よく来てくれた。カズキ」


 ここはどうやら執務室のようで、ロトは随分と書類に囲まれているようだ。


「大勢で押しかけて悪いな」


「いいさ。さぁ座りたまえ」


 俺とロトは腰掛け、俺以外の三人は遠慮してか壁際で佇み待機する。


「早速で悪いが本題に入らせてもらう。こっちも時間が無くてな」


「ああ。こっちもこの後、用事があるから気にしないでくれ」


「用件というのは以前にも話した物資運搬の件だ」


「やっぱりその件か。聞かせてくれ」


「ああ。まず、カズキに頼みたいことは王城内にある物資を速やかに兵站へ運搬をすることだ」


 兵站って言うと、戦場を維持するための補給基地みたいなもんだっけか。


「まぁその件に関しちゃ協力するって約束だったから、それはいいんだけどさ」


「ああ。そう言ってもらえると助かる。物資運搬の件に関しては全てそちらの指示に従うよう部下には後から知らせる」


「そんな俺任せにしていいのか? 大事な物資なんだろ?」


「いいんだ。今は余計な駆け引きをしている場合ではないしな。それに、カズキは無償で民の治療に奴隷の力を使わせたと聞いている。多少なりともこの国に愛着を持ってくれているのなら、国の大事に力を貸してくれると俺は信じている」


「俺は愛国者じゃないんだけどな。……まぁいいや。物資の運搬の件は了解した」


 そこで俺は思考を巡らせる。物資の運搬の現場指示者はロージー達が適任だろう。IGは俺が不在でも限定条件下においては誰でも使うことができる。具体的にはベルトコンベヤの様な物をIGで二カ所に繫ぎ、ベルトコンベヤを動かすことで運搬は可能だ。今から作る必要はあるだろうが、試作した四輪駆動の木造車で使用した回転する魔石を流用すればすぐに用意はできる。


「物資運搬の件は俺からロージーに一任するけどいいか?」


「ああ。カズキが任せるというのなら大丈夫だろう」


「それと、物資の運搬だが兵站が定まるまでは待ってくれ。まとまった数を運搬しようとするとそれなりに設備が必要だからな」


「……そうか。分かった」


 とりあえず、これで少し時間が稼げるか。


「話はこれで終わりか?」


「ああ。物資運搬の引き受けてもらい、その監督をしてくれる人間をそちらから出してもらえるなら、こちらからこれ以上口を出すつもりはない」


「分かった。ロージーと細かな点を相談し合って決まったら改めて連絡をしよう」


「助かる」


 ロトが手を差し出してきて、俺はそれを握った。


「コーラとポップコーンは演目の必需品だしな」


「こーら? ぽっぷこーん?」


「こっちの話だ」


 俺は笑って立ち上がった。


「勝とうぜ」

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