異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第212節

 朝。唐突な訪問客により目が覚める。


「カズキ様。ロト様とクリス様の使者がそれぞれいらっしゃっていますが、どういたしましょうか?」


 アイリスが申し訳なさそうに寝起きの俺にお伺いを立てる。


「……とりあえず、ぶぶ漬けでも出してやってくれ」


「えーっと、ぶぶ漬けってなんでしょうか?」


「いや、気にしないでくれ。ただの慣用句だ」


 今時本場の人間だってしないだろうし。


「客間に通してお茶でも出してくれ。俺は顔でも洗って身支度を整えてくる」


「分かりました。あと、今朝からジェイドさんを見かけないのですが、ご存じありませんか?」


「ジェイド? ジェイドの事ならアンバーに聞いた方が早いんじゃないか?」


「アンバーさんは知らないそうなんですよ」


 アンバーはこのままこっちに居残るのか。


「まぁアンバーが知らないならこの屋敷にいる人間には分からんだろ。もしかしたら、急にクリスかレオに呼び出しを受けたのかもしれないしな」


 一晩明けても、俺の中でのジェイドに対する関心が非常に低い。アイリスには悪いが、少し突き放した物言いになっているかもしれない。


「とりあえず、準備してくる」


 俺はアイリスをやんわりと退出させて着替える。というか、昨日は上半身裸のまま寝ていたようだ。まぁいいや。
 俺は着替えた後、客間に移動する。
 ロトとクリスの使者はそれぞれの親衛隊独自の装いをしており、クリスの親衛隊の恰好ははっきりと見たことがあるので区別がついた。見慣れていない方がロトの親衛隊の人間だろう。クリスの部下の方が女性で、ロトの部下の方が男性だ。


「今日はどういった用件でしょうか」


 俺は歓迎の言葉も省き、用件を伺いながら対面の席に座る。
 今の俺の服装はジーパンにシャツといったカジュアルなスタイルでプライベート然とした装いだ。


「ロト殿下より伝言を承っております」


 ロトの部下の男が先だって用件を伝えてくる。


「早急にカンザキ殿に登城して頂きたいとの事です」


「ああ、そういうこと。そっちは?」


「クリス王女の勅命により、カンザキ殿に登城して頂きたいとの事です」


 つまり両者とも俺に話があり城に来いって事か。


「クリス王女の方は急ぎの用件なのか?」


「陽が完全に昇った頃に来ていただきたいとのことです」


 ってことは正午か。


「なら、先にロト殿下の用件から伺う。その後にクリス王女の所に行くから、その旨をクリス王女に伝えてもらえないか?」


「承知いたしました」


 そういえば、俺はレオの直属の部下扱いだから体面的にはこの女の子より俺の方が立場としては上なんだろうか? 


「じゃあ、少し用意してから向かうから先に城に戻っててくれるかな?」


「では、私はこれで」


 クリスの部下の方は先に退出する。


「私はカンザキ殿と同行するよう命じられておりますので、待たせていただいてもよろしいですか?」


「分かった。すぐに済むだろうから、ここでお茶でも飲みながらくつろいでて」


 一応、客間だからお茶請けも棚に保管してある。小袋に入ったお菓子類を適当な手の平サイズの編みカゴに入れてロトの部下に差しだす。


「適当に食べていいから」


 そう言って俺は部屋を出て、アイリスとフランとハリソンを呼び寄せる。十中八九、戦争絡みだろうからこいつらを連れて行く必要がある。
 三人には十分な準備をしてから玄関で待機するよう伝え、俺も自室で準備を始め、玄関に集合してからロトの部下の男に準備ができたことを伝えた。その時、ちらりと編みカゴの中を見るとごっそりと中身が減っていたのは微かに笑ってしまった。

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