異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第209節

 自室に戻って時間を潰し、皆が戻ったところで夕食を始め、食事を終えた所で皆と例の件について話し合うことにした。
 食後のティータイムも兼ねてジェイドとアンバーは俺以外の皆に紅茶を、アイリスは俺用に緑茶を淹れてくれた。


「普段なら食後のくつろぎタイムってところだけど、今日は少し厄介な相談がある」


 三人が席に着いたタイミングで俺はそう切り出すと、メンバーの中でフラン以外の全員が何事かとこっちに耳を傾けてくれる。


「明日、魔王が軍勢を引き連れ、この国に攻め入ってくる」


 きっとロトの事だ。今日の閉会式でこの件を触れているに違いない。まぁアイリス達はずっと治療をしていただろうから閉会式に出席自体はしてないだろうが、アイリス達がそこまで驚いていない様子からして街の雰囲気がそういう方向に向かっている事はなんとなく察しているらしい。


「明日からこの国は戦争になるだろう。そこで、俺は俺の出来る事をしようと思う」


 俺は緑茶を一口含み、唇を濡らす。


「魔人や魔獣を討伐しながら、物資供給による後方支援だ。そこでお前達に力を貸してもらいたい」


 俺は自分の持てる限りの力を使ってみようと思う。それでも人手が足りないならこいつらの力を使えばいい。奴隷を使わずして何が主人か。


「まず、戦場にはフランを筆頭にハリソンとアイリス。街での後方支援にはロージーを中心としてジェイド、アンバーだ。何か質問はあるか?」


 この場で手を挙げたのは意外にもロージーだった。


「具体的にはどう力を貸せばいいのかしら?」


「ああ。まず、ロージー達には俺が持ち込む物品の販売を全面的に任せる。ジェイドとアンバーの二人にロージーのサポートだ。目的は物資の供給を欠いて戦争における士気を下げない事と金銭的な利益を上げる事だ。ハリソンやロージーなら分かると思うけど、戦争は金食い虫だからな。商売人にとっては一番の機会でもある。あと、金はできるだけ魔石に買い換えてくれ」


 戦争の時は不思議と金の価値が下がって物の価値が上がる。できるだけ初期の段階で金は物に変えておいた方がいい。それに魔族との戦争ともなれば魔石の供給が上がり、価値が下がりそうなものだ。


「それからフラン、ハリソン、アイリスは俺と一緒に戦場で戦ってもらう。チーム編成的な意味合いで行けばフランが前衛でハリソンとアイリスが後衛だ。俺がチームに加わるときは中衛的な感じでどっちにも加担する」


 俺は吸魔石を持っているから魔力量で言えば無尽に近い。試したことはないが、この世界で置ける戦略級、要は大規模な魔術を行使することも不可能ではない。そう言った意味合いで行けばハリソンとアイリスよりもさらに後衛で魔術を使う可能性すらあるが。


「ここまでで何か質問は?」


 次に手を挙げたのはジェイドだった。


「今回の件はクリス様から何かお話を持ちかけられたようなことは無いのですか?」


「今回の件は俺の独断だ。ロトやクリスから何かしてくれという指示は特にない。あったとしても、それに従うかどうかはその時の指示によるけどな」


「分かりました」


「他には?」


 ハリソンが手を上げる。


「私達は何を目指せばいいのでしょうか? 単純に敵の軍勢の数を減らすだけでいいのでしょうか?」


「そうだな……。まだ俺も敵の勢力がどれだけか把握してはいないが、俺達のチームの中で最強なのは間違いなくフランだ。そのフランが魔王と戦うシチュエーションを作ってやること。後ろから襲い掛かってもいいし、正面から敵を蹴散らして攻め入ってもいい。とにかくこの戦争での終結方法は魔王の首を取るしかない。で、魔王の首を取れる人間を魔王の所に連れて行くっていうのが目標だ」


「それができない場合は?」


「魔王を倒せる可能性がある人間を魔王の所に連れて行く補助をする。少なくとも、フラン以上の実力がある人間じゃないと連れて行く意味が無い」


 フランが国内で屈指の実力を持っているのは間違いないが、上には上がいる。なにせ、国内で最強の筆頭があのロトだっていうんだから困りものだ。将棋で言えば王将、チェスで言えばキングが相対した時点で勝負がついてしまうからな。


「他に質問は?」


 おおよその質問には答えたからかそれ以上質問が出ることは無かった。


「なら、解散だ。明日からは誇張無しで忙しくなると思うから今のうちにゆっくり休憩してくれ」


 まぁ俺の場合は今日から忙しいんだけどな。

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