異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第208節

 屋敷に戻り、俺は水を飲むため厨房へ。フランは自室へと戻った。
 食堂に入るとジェイドとアンバーが夕食の準備をしてくれていた。
 俺は厨房に入って水をコップに注ぎ、飲みがなら二人に話を聞いてみると、どうやら二人も武闘大会会場にいたらしい。といっても普通の会場ではなく王族や貴族といった人間のみが立ち入れる区画というものがあるらしく、二人はクリスのはからいでそっちで観戦していたらしい。そしてハンスの暴走によってクリスは王城に避難。この時にロトも一緒に王城に戻ったらしい。それで二人は行き場所もなく、屋敷に戻って俺達の帰りを待っていたらしい。


「随分な騒ぎだったろ?」


「そうですね。ただ、ご主人様がフラン様をお助けになった後、誰かが障壁を張ったおかげで被害の拡大がなかったそうです」


 ジェイドはトントンと野菜を切り分けながら答えてくれる。この世界にはまだ普及していないステンレス製の包丁だったりする。


「見てたのか?」


「はい。観客席から舞台に飛び込みフラン様を助ける姿はとても素敵でした」


「ご主人様はとても丈夫なんですね」


 ジェイドは素直に褒めてくれるが、アンバーの方は少し棘があるように感じるのはなんでだろうか。


「何か気になることでもあったのか? アンバー」


「あのハンスという男が仕掛けた魔術、時間差発動による二段式の爆発体だったみたいですね」


「見てたのか?」


「ええ。一撃目を防いで二撃目の直撃を受けている所も」


 目が良いな。飛び散った破片の破片ともなれば間近に見ていた俺ですら砂のようにしか見えなかったのに。


「まぁ魔獣に噛み付かれてもチクリとしたぐらいだからな。それに比べれば痛くないさ」


「あの一撃目の直撃を受けた観客達は体内で二撃目が爆発したらしいわ」


 ……それ、本気で殺しに来てるんじゃ……。


「死傷者は少ないけれど、怪我人が多すぎたわ。手足が吹き飛んでいたり、吹き飛ばずとも体内に異物が残ったまま満足の動かせない人間……医者の数が足りなかったそうで、クリス様の親衛隊の中から治癒の魔術が使える人間が残らず動いたって話だし」


「そんなにか……」


「ええ。だから、アイリス様達が治療をしたのはとても助かっていると思うわ」


 ……宣戦布告の攻撃としては十分な効果が出てる訳か。死人より怪我人を出し、治癒魔術を使える人間を動かし疲弊させる。明日の行軍では更に辛い目にあうに違いない。


「ハンスの野郎、嫌な置き土産をしてくれるぜ」


 これならハンスが優勝してロトが襲われるといった悦楽の王のシナリオの方が幾分マシに思える。
 俺は飲み終わったコップを水につけた。


「悪いけど、これ洗っといてくれ」


「かしこまりました」

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