異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第203節

 俺達はフランの所へ戻り、かいつまんで説明をする。ハンスとクララが魔人であることやその目的を伏せ、代わりにハンスの身柄を解放してくれるよう頼むためにクララをロトに会わせるという名目を話した。
 フランは深くは追及してこず、主がそういうならと答えた。
 武闘大会会場の方も騒ぎが静まり、ロイスが展開していた防御壁もいつの間にか消失している。
 俺達はアイリス達と合流するため互いを引き寄せ合う一対の魔宝石を使い、アイリス達の所へ向かった。アイリス達は今も会場にいるらしく、観客席に登ってみると怪我人達をアイリスが治療していた。俺の命令を忠実に守っていたらしい……というか、アイリスに限っては俺の命令は絶対だったか。


「お前ら、もういいぞ」


 この場にいるのはアイリス、ハリソン、ロージーの三人と怪我人多数だった。


「あれ? ロイスは?」


 俺の質問にはハリソンが答えた。


「ロイス様なら衛兵の方達に事情を説明に連れていかれました」


「そうか、まぁいいや」


 俺は怪我人達を眺めてみると、この場にいる怪我人はそこまで重体じゃないらしい。ロージーに聞いてみれば、重体の患者は既に運び出されているようで軽傷の患者はアイリスに任せるといった状態らしい。
 俺はアイリスに追加の魔石を渡した。


「カズキ様、このまま無償で治療を施してもよろしいのでしょうか?」


 ロージーが少し気になったように小声で聞いてきた。


「んー、まぁいいだろ。無償の慈愛の精神で治療に当たってくれ。それと、ついでにフランの治療もしてやってくれ。俺はこの子を連れてロトに会わなきゃいけなくなったからな」


「分かりました。後の事は私に任せてください」


「ああ。この場の仕切りはロージーに任せる。なんか問題が起きたら俺の名前を使っていいからな」


 とりあえず、これでいいだろう。
 俺は会場を離れ、クララを連れて王城へと向かう。


「あなたって善人なのね」


「善人ってか、偽善者だけどね」


 俺は善人って呼ばれるのはあまり好きじゃない。


「無償で治療をするなんて善人じゃなければできないはずでしょう?」


「違うよ。俺は無償で治療をすることで優越感に浸ってるだけさ。怪我人を見て痛ましいと思ったり、ハンスに対して怒りを覚えてる訳でもないからね」


「あら、そうだったの? それを口にするあなたはやっぱり変人ね」


「気のせいだろ」


 王城に近付くにつれ、兵士の数が多いように感じる。それも装備が異なる兵士、それぞれ所属や階級が違うのだろうか? その中にはクリスティーナ親衛隊がいるのも分かった。
 厳戒態勢の中でも一応は俺は顔パスで、その同行人たるクララも同様だ。
 王城についてから適当に兵士を掴まえてロトへの謁見を申し願い出たら、偶然にもロトの親衛隊所属の兵士だったらしくロトへの連絡がついた。さすがに建国式典最終日の午後のため閉会式の準備等で忙しいとの事だったが、俺のためにわざわざ少しだけ時間を割いてくれた。
 俺達は適当な部屋で待たされ、ロトの方からこちらへ出向いてきてくれた。


「カズキ、急にどうしたんだ?」

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