異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第200節

 フランは黄色に煌めく剣を手にハンスに詰め寄った。
 ハンスは石の剣でフランの煌めく剣を受け、鍔迫り合う二人。しかし、フランの剣がハンスの剣に徐々にめり込んでいく。ハンスは顔色を変え、咄嗟に石の剣を捨てバックステップでフランとの距離をとる。床に真っ二つに折られた……いや、溶断された石の剣が断面を真っ赤に光らせ転がっていた。あのままハンスが鍔迫り合いをしたままであれば、石の剣と同様に真っ二つにされていたに違いない。
 俺が一つ一つを頭で理解している間にも、フランは爆発的な加速によってハンスとの距離を詰め、先ほどよりも更に激しくハンスを攻め立てた。それこそ、ハンスが新たな武器を創造できないように。ハンスだってそれなりの装備をしている。フランが持つ武器がただの刀剣の類であれば、籠手なり何なりで素手でも捌けたかもしれない。だが、フランの得物は石すら溶断する熱を帯びた剣だ。仮に小手で受け止められたとして、その熱は確実にハンスの防具を熱し、ただでは済まさないだろう。だからこそ、ハンスは躱すしかない。防戦一方のハンス。しかし、ハンスには反撃の手段が残っていた。ハンスは足を床に踏み下ろす。それでもフランは引きもせず更に一歩踏み入った。


 ――フランの剣の切っ先がハンスの喉元に突き付けられた。


 ハンスの杭はどういう訳か発動しなかった。


「なるほど。そういうこと」


 ロイスは一人で納得したようにうなずいていた。


「そういうことって、どういうことだよ」


「剣を作るには手で地面を触る必要がある。杭を作るには地面を踏む必要がある。そういうことよ」


 俺はハンスの足元をよく見た。すると、ハンスが床を踏み抜いたのかと思ったが、地面とハンスの足の間にフランの足が挟まっていた。


「普通の戦士なら、足を踏まれれば回避行動が思うように取れないからしないのでしょうけれど。フランちゃん、思い切ったことをするわね。もし、あの状態で杭の攻撃を受けていたら、さすがのフランちゃんも直撃は免れなかったでしょうに」


 実況者がフランの勝利宣言をする。と同時にフランの周囲に漂っていた炎も解かれる。観客の歓声が会場を満たす。マナーの悪い客が、いやこっちだと当たり前なのだろうか食べ物やら金やらひっちゃかめっちゃかに投げ入れられる。
 俺はその歓声により、体が弛緩した。見ているだけだったが、いつのまにか随分と緊張していたらしい。


「ふぅ……。勝ったか」


 俺がフランの勝利の余韻に浸っていると、控室から舞台へ続く階段を上ってくる少女見えた。確かクララという名前のハンスの娘だったか。


「ハンス!! ダメ!!」

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