異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第198節

 試合開始の合図とともにハンスはフランに詰め寄ろうとするが、それより先んじてフランは刀剣に炎を灯した。そして、その炎はフランを中心に逆巻く炎の渦の様相を呈しており、ハンスは近づくに近づけないといった一瞬のこう着状態を見せた。


「最初から全力で行く気みたいだな」


 俺は誰に行ったわけでもなかったが、ついその言葉が口についた。


「おそらく、誰もまだ見たことが無いフランさんの戦姿を目の当たりにすると思います」


「そうね……フランちゃんから発してる魔力、凄いわ……。まるで、熱砂の真っただ中にいるような臭い……」


 両隣のアイリスとロイスが今のフランの状態をそう評した。俺には魔力を感知する能力はないが、目の前の現象があの一人の女性によって起こっているという事実だけがあった。


 フランの周囲を逆巻いていた炎は徐々にフラン自身にへと収束し、手に持つ剣は炎により一回り大きく見えた。
 ……なんといって表現すればいいんだろうか、漫画的に言えばオーラのようにフランの身体に纏うような炎がある。その炎はオーロラのような滑らかな見た目をしており、炎のように明るく光る絹とでも言われれば信じてしまいそうなほどに美しかった。まるで、炎のドレスを身に纏っているようだった。
 ハンスは逆巻く炎の消失と共にフランへと駆け寄る。
 一合。
 気が付いた時にはフランとハンスが交差しており、そのあとに金属音が会場に響いた。それで今の一瞬で刃を交えたのだと推察できた。
 明らかに俺の目がついて行っていない。


「……今の見えたか」


 俺は他の四人に聞いてみた。かろうじて答えられたのはハリソンだけだった。


「ハンスさんが駆け寄ろうとした時、フランさんがそれを上回る速度で迎撃し、ハンスさんが防御をした……んだと思います」


 そういうことか。ハリソンも全容を把握していないような口ぶりだ。


「あれは身体強化の魔術によるものだとは思いますが、あれは私が知っている身体強化とは桁が違います」


 ハリソンはそう評した。


「あれが身体強化の一種っていうことなら、あの急加速の仕組みは単純なことよ」


 ロイスがハリソンの推測を受けた上で説明してくれる。


「まさか……」


 ロイスの振りにハリソンは何か心当たりがありそうだ。


「あら、あなたも知ってたの? 身体強化の魔術も魔術の一種、魔力を収束して貯め込み爆発させる。ロイスちゃん達魔術師なら当たり前にしていることでしょう? 強い魔術を使うには溜めが必要。それと同じことをしていたのよ」


「でも! あれは非常に身体に負荷がかかる方法だと聞いてみます! 一歩間違えれば……」


「そうね。でも、カズキはフランちゃんに全力で戦えって言ったんでしょ?」


 ……そういうことか。

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