異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第196節

「お、そろそろ始まるみたいだ」


 ハリソンが舞台に上がる実況者を見て言う。
 試合開始までまだ少し時間があるようだが。


「皆様、長らくお待たせしました! 建国式典最終日! 最後を締めくくる武闘大会決勝戦! 今年は百余名の腕の覚えがある者達が集い、最強を決めるためその腕を振るいました! そして今、その最強が決まろうとしています!」


 なるほど。会場を盛り上げるための前座か。


「一人目は放浪の剣士、ハンス選手! 当初は無名の剣士でしたが、現在では実力は隊長クラスに匹敵するとも噂をされており、優勝候補の一人でもあったダグラス選手をその見た目にそぐわない力をもって捻じ伏せました! 決勝戦ではどのような戦い方を見せてくれるのか注目です!」


 盛り上がらないはずがない。観客の熱狂が輪を外れた俺たちの所まで届いてくる。


「二人目は赤き獣、フラン選手! 冒険者として名を馳せ、その実力もまた隊長クラスに匹敵すると言われ、その剣によって切り伏せられた魔人の数は両の指では足りない程! また、フラン選手を知る方々にお話を伺ったところ、フラン選手は未だ全力を見せていないとコメントを頂いております!」


 フランの紹介により更に高まる熱狂。早く始めろといった野次が留まるところを知らない。


「それではお待たせしました! 両選手の入場です!」


 実況の掛け声とともにいつの間にか用意された楽器が音楽を奏でる。さすが決勝戦ということもあり、演出が観客達を更なる熱狂の渦へと巻きこんでいく。
 そして、ハンスとフランの二人が舞台へと上がる。ハンスは笑顔を絶やさず、フランは険しい表情を浮かべている。その様子がまるでハンスの方が腕が上だと思わされる。


「フランさん、少し緊張していますね」


 俺の隣に座りながらアイリスが言う。
 アイリスの横顔を見ると先程の笑顔から一変して険しくなっている。


「相手がそれだけ厄介ってことか」


 俺の問いに対してアイリスは頷いた。


「でも、悪い緊張ではないと思います。体が強張っているわけでもないですし」


「アイリスは目がいいんだな」


 俺にはそんなの全く分からない。それが現代人たる俺の認識と異世界育ちの元お嬢様の違いか。
 俺は再び舞台に視線を向ける。


「武闘大会優勝者にはロト王子により望みの金銭、望みの品、望みの官職を賜う権利を得ることができます! では、これから戦う両名にこの試合の意気込みと叶えたい望みを聞いてみましょう!」


 そういや、そんな景品あったな。俺はもう負けてるから特に考えてなかったから忘れてた。そういや、フランは何を望むんだろうか。

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