異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第194節

「その、仲間はどうなったんだ?」


 少し、躊躇いがちに聞いてみた。
 俺のそんな心配を汲み取ってかフランは柔らかく笑って見せた。


「腕は取り戻せなかったが、無事に快復して日常生活は送れるようになった。この間、久しぶりに会ったが元気そうにしていたな」


 そういや、昨日は昔の仲間と酒を飲んできたって言ってたな。それが件の仲間の話だったのか。


「そうか」


 それを聞いた俺は少しは救いがあったのかと安堵した。
 それにしても、この世界でも失った腕は取り戻せないのか……治療魔術も万能じゃないってことは覚えておかないと。


「まさかまた仲間と酒が飲めるとは思わなかった。これも主が奴隷のアタイに自由をくれたからだ」


 フランはそう言って笑ってくれた。


「いや、奴隷で自由ってのもおかしな話だけどな」


 俺はフランの言葉に対し、苦笑しながらお茶を啜る。


「その仲間もアタイの試合を見てたらしくてね。だから下手な試合は見せられないんだ」


 来てたのか。なら、確かに下手な試合は見せられないか……。なら、しょうがないか。


「フラン、決勝戦はお前の好きに戦っていいぞ」


 俺はまっすぐにフランの目を見つめた。フランも俺にまっすぐ視線を向けてくる。


「いいのか?」


 手にしていたカップを置いて、確認するように聞いてきた。


「ああ。お前がお前らしく戦う姿を見せてやれ」


 変な縛りなんてつけず、本来の戦い方で戦ってもらおう。怪我をしてもいいという分けではないけれど、チャンスでも反撃を警戒して踏み込めないとかは無しだ。それに、フランの本来の戦い方を見てみたいとも思った。


「分かった。決勝戦は全力で戦おう」


 俺の気持ちをどれだけ汲み取っての言葉かは分からないが、全力で戦ってくれるだけで十分だ。フランは俺の期待に応えようとしてくれる。


「ああ。さてと、食事も終わったし後は解散だな」


 決勝戦前だ。フランには一人で集中する時間も必要だろう。それに、あの話のあとだ。決勝戦前に話すべきかどうか微妙だったが、フランの心境に少しでもいい影響があればいいが。
 各々席を立ち、俺は昼飯代を支払い店を出ると、店先で全員が俺を待っていた。
 俺はフランに近寄って肩を叩く。


「フラン。勝てよ」


 フランの肩を握る手に力が入る。


「言われなくても勝つさ」


 フランは勝ち誇った顔でそう宣言してみせた。

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