異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第193節

 食事も一段落し、食後のティータイムに入る。
 リラックスした雰囲気の中でフランは自分の過去を語り始めた。


「アタイは元々孤児でね。言っちゃあなんだけど、そこの二人と出身は一緒さ」


 そういってフランはジェイドとアンバーを見る。


「アタイはシーク人だからね。十歳も超えればアベル人の大人と変わらないぐらいの力があったから、仕事にもでるようになったんだ。その時に世話になったのが冒険者ギルドだったんだ」


「十歳で冒険者をやってたのか?」


「そういうわけじゃないさ。冒険者ギルドってのは元々、便利屋集団みたいなもんだったんだ。職人ギルドが欲しがる素材を集めたり、街で困ってる人間がいたら依頼を受けたりな。その名残で今でも冒険者じゃない人間でも受けられる依頼があったんだ。アタイはそんな依頼を受けて報酬を貰って金を貯めてたんだ」


 フランはお茶を一口啜る。


「冒険者ギルドに出入りしてれば、自然とアタイも冒険者になりたいって思うようになってね。貯めた金で装備を揃えていつか冒険者になるんだってね」


 憧れだったのかな。


「そのうち、冒険者の人達に顔を覚えてもらうようになって戦い方とか魔術の使い方とか、そういったもんを教えてもらうようになったんだ。アタイのそんな姿を見てか、孤児院の連中もアタイのように冒険者になるんだって言いだして、院長によく怒られてたっけな」


 フランは懐かしそうに語る。


「それで12歳になった時に冒険者ギルドの一員として認められるようになったんだ。初めの頃は他の冒険者の手伝いや荷物持ちをして、13で魔獣を初めて倒して、14で孤児院を出て、15で孤児院を出た仲間とチームを作ったんだ」


 フランのチーム。フランが借金を背負う切っ掛けになったチームだ。


「アタイが一番早く冒険者になってたから、他の連中に冒険者としての生き方を教えたんだ。……あの頃は楽しかったな……」


 フランは凄く寂しそうな表情を浮かべた。


「何年かすればアタイは『赤き獣』と呼ばれるようになったんだ。その頃からかな。かなり危ない仕事も舞い込んでくるようになった。それでもなんとかしてきた……いや、なんとかならなかったからこうなったんだけどな」


 フランは苦笑いを浮かべて見せた。


「アタイ達のチームは五人いたんだ。全員同じ孤児院。あの時もその五人で依頼を受けてようやく完遂できそうなところで魔人に会っちまったんだ」


 フランはテーブルに肘を突き、手を額に当て、俯いた。俺からはフランの表情が読めなくなった。


「アタイらも魔人と戦ったことはあった。だから、その時も追加報酬が手に入る程度に思ってたんだ……だけど、相手が強すぎた。勝てないと気が付いた時には仲間の二人が殺された。逃げる判断をした時には仲間の一人が殺された。逃げだした時には仲間の一人が腕を落とされた」


 …………。


「なんとか逃げることができたアタイ達だったけど、腕を落とされた仲間は出血のし過ぎで意識も朦朧としていて、アタイは仕方がなく仲間の傷口を焼いて無理矢理止血させたんだ。……あの時の臭いは今でも……」


 フランの顔色が悪くなってきた。


「大丈夫か?」


「気にしないでくれ。……いつかは話さなきゃいけないと思ってたんだ」


「街の外だとまともな治療もできなかった。殺された仲間の一人が治療魔術を使えたからそいつに任せっきりだったからな。あの時は本当に精神的にも危なかった。逃げ出すために荷物は全部捨ててきたから、食料だってほとんど無かった。それでも、仲間を背負って近くの村までたどり着いたんだ。あの時は本当に神に感謝したね」


 フランは残ったお茶を一度に飲み干した。


「女将さん、お茶をもう一杯貰えるか?」


「あいよ」


 女将さんが新しいお茶を出してくれ、フランはさらにもう一口啜ってから話を続けた。


「それからは手元に残ったものを売り払ってでも一度、サニングに戻ることにしたんだ。あの時、サニングにたどり着いた時に残ってたのはこの鎧ぐらいだったんだけどな。まぁ結局、こいつも売ることになったんだけどな」


 そういや、そんな話をしてたっけか。


「サニングにたどり着いた時点で仲間は随分と弱ってた。仲間が三人も殺され、腕を失って、高熱も出して……止血のために焼いた腕もひどいありさまだった。せめて、そいつだけでも助けないとと思って治療してくれる人間を探したんだ……でも、安い金で動いてくれる人間は切り傷や打撲の治療、少し高くつく人間でも単純な骨折を治してくれる程度だった。でも、仲間はそんな治療じゃもう間に合わないところにまで来てたんだ……依頼をこなす時間もないし、そもそもアタイに依頼を回すかどうか審議にかける時間が必要だって言われる有様だったんだ……だから……アタイは金貸しに金を借りたんだ」


 俺が思った以上にフランは辛い経験をしたんだと思った。そして、その場に俺がいれば手を貸せるんじゃないかもと思い、結局は何も変わらないんだと思った。
 俺は結局、金を貸すことはしても、きっと金をあげることはないだろう。何かの見返りを期待する人間が俺だから。


「結局、借りた金は返せず……あとは主の知っての通りさ」



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