異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第191節

「……ここ」


 アンバーが紹介した店は会場から少し離れた表通りに面していない知る人ぞ知るって感じの店だった。
 そういや道中、大通りを通った時は武闘大会会場から流れてきた観客が押し寄せ、店先で人がごった返してたっけか。そこらへんも考えてアンバーがこの店を選んだんなら見た目や普段の言動に反して気が利いてる。
 俺達が店に入ると店主が優しそうな声で迎え入れてくれた。
 内装は木造を基調としており、温かみのある雰囲気があった。


「あら、アンバーちゃんにジェイドちゃんじゃないか。今日は非番かい?」


 店の女将さんだろうか。年配の女性が慣れた風にアンバー達に声をかけた。


「……違う。ご主人様が昼食をとりたいって言ったから連れてきた」


「あらまぁ。クリス王女の所を出てきたのかい?」


「……違う。クリス王女の命令」


「そうだったの……。あなたがアンバーちゃん達の新しいご主人様? 若いわねぇ」


「それを言ったら、クリス様のほうが若いんですけどね」


 俺は苦笑しながら席に着いた。四人掛けのテーブルなので二つのテーブルに分かれる。俺の隣にアイリス、俺の正面にフラン。フランの隣に我が物顔で座るロイス。
 他の面々もテーブルについた。


「フランちゃん、何食べるー?」


 彼女が彼氏に聞くような甘ったるい声でフランに訊く。そしてフランは何とも言えない表情を浮かべ、俺に非難の目を向ける。
 俺はそれをあえて無視して店内を見渡す。一応、今まで行った店と同様にメニューが書かれた木札が壁に掛けられているが、俺には読めない。


「アイリス、適当に選んでくれ」


「分かりました」


 俺がメニューを読めないのはアイリスも分かっているし、俺がどんな料理を好むかもある程度は分かっている。だから任す。


「フラン、次の試合大丈夫そうか?」


「主、アタイを信用してないのか?」


「フランが強いってのは知ってるし、ここまで無傷で勝ってきてるんだから他の連中より実力があるってのははっきり分かってる。ロイスやジムとの試合でも勝って見せたんだから。でも、あのハンスって男の実力が分からん。ダグラスって選手もロトの親衛隊にいるってことはそれなりの実力者だろうし、それをあそこまで無残な姿に追い込める程度の実力っていうのは分かった。だから、まぁなんだ」


「カズキはー、フランちゃんのことが心配なんだよねー」


 ロイスがニヤニヤしながら俺のことを見てくる。そしてフランは心配されている事が面白くないのか、顔をそむけた。


「うっさい」


 俺は視線を切って携帯をいじる。


「カズキー、それなにー?」


「携帯だよ。まぁ俺の国の道具の一つ」


 ロイスは俺の手元に鼻を近づけクンクンと匂う。


「魔道具じゃないっぽいねー」


「分かるのか?」


「ロイスちゃん、鼻が利くからね~。 魔力の有無なら匂いでわかるもーん」


 そういや、フィルが言ってたか。魔力に敏感なやつは魔力が音やら匂いで分かるやつがいるって。ロイスもその類なのか。





「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く