異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第190節

「俺の事、知ってるんですか?」


 変な二つ名が付き、少しだけ知名度も上がったというのはあるが所詮は三回戦敗退だ。そこまで気にかけている人間がいるとは思わなかったが。


「黒髪の異人といえば怪力を振るい、複合魔術を操り、金満生活を送り、美女を侍らせるって聞いたことがありますよ」


 どんな噂だよ。


「それにしても、あの赤き獣の主って黒髪の異人さんだったなんて知りませんでした」


「ちょっとした経緯があってフランは俺が所有しています。決勝戦は簡単に勝てると思わないでください」


「フランさんの試合は見させてもらってますから、それは分かってますよ。午後の決勝戦楽しみにしてます。それじゃ、クララがお腹を空かせてるので失礼しますね」


 そう言ってハンスは頭を下げて選手控室を出る。


「カズキ様」


 俺の袖を引っ張るアイリス。


「どうした? アイリス」


「あの人達、もの凄く強い……と思います」


「いや、そりゃあ決勝戦に出場するぐらいなんだから強いだろ」


「いえ、そういうことではなく……」


「カーズキー。そのお嬢ちゃんの言うとおりだよー。あの二人ー、もんのすごーい魔力を持ってる」


 ロイスがアイリスの言いたいことを代弁してくれるようだ。


「分かるのか?」


「ロイスちゃんも『裏魔術の師』って言われるぐらいだからー、魔力の濃淡は少しぐらい分かるんだけどー、あの二人とも並の魔力保有量じゃないねぇー」


「魔力量の多寡なんて魔石で補えるもんじゃないのか?」


「いいやー、あれだけ魔力が多いとー……まぁいいやー。魔術の講義はどうせ後でもしてあげるからー」


「もったいぶるなよ」


「それよりー、午後の試合まで時間もあるしー。ロイスちゃん、フランちゃんとご飯したいなー」


 ……まぁ腹が減っては戦はできぬ。


「仕方ないな。皆、それでいいか?」


 俺の問いかけに皆は賛同してくれる。にしたって人が多すぎだろ。


「アンバー、近くに良い店はないか? 料理が美味くて早く出る店は」


「……ついてきて」


 アンバーはどこかに視線を向け、答えた。たぶん、店のある方向を確認したんだろう。


「カーズキー、おごってー」


 ロイスが俺の背中に抱き着いてくる。思ったより胸があった。


「分かったよ」


「やったー。……あれー、なんかカズキの髪から良い匂いがするー」


 ロイスが俺の髪に顔を押し当ててきやがった。


「やめろー!」


 俺はロイスを無理やり引き剥がす。恥ずかしいってのもあるが、アイリスやフランからの視線が痛い。

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