異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第188節

 意外にもあっさりとした幕引き。時間にして三分ぐらいだっただろう。初めはジムの一方的な攻撃でフランは防戦一方のように見えた。しかし、ジムの攻撃に慣れたフランが反撃をして勝った。


「あれは地力の差だわ。あのジムって子、剣技の才能はあるようだけれど、それだけ。フランちゃんには戦術の才能と経験があるもの。それを埋めるにはまだまだ時間がかかるわね」


「始まる前からフランが勝つってわかってた口ぶりだな」


「最初の一撃であの子の攻撃をフランちゃんが避けた時点でフランちゃんが勝つって思ったわ。大方、自分の力をフランちゃんに認めて欲しいって所でしょう」


「なるほどね」


 舞台上でフランがジムに手を伸ばし引き起こす。歓声で聞こえないが、フランが何かをジムに言って、ジムがそれを否定する素振りを見せた。その後、ジムは舞台から下りた。


「準決勝戦を見事勝ち抜いたフラン選手に今の試合の感想を聞いてみましょう! フラン選手、今の試合について何か一言お願いします!」


「彼は良い冒険者になるでしょうね。あの技を使える人間はそう多くは無いですから、才能はあると思いました」


「ありがとうございます! それでは、今一度フラン選手に拍手をお願いします!」


 観客は総立ちになって拍手を送る。俺も拍手を送った。


「ロイスさん。俺、フランの所に行ってきます」


「なら、ロイスちゃんも行こうかしら。フランちゃんともう一度お喋りしたいし」


「……まぁいいか。とりあえず、控室に行きましょう」


 ロイスを連れて行っても問題ないだろうとの判断だ。一応、世話になってるわけだし、無碍にもできまい。
 関係者のみ立ち入ることのできるエリアに俺達は顔パスで通れた。


「フラン、好調だったな」


「主、どうしてその人と一緒に?」


 フランは俺の労いの言葉に応えず、ロイスを睨みながら俺に詰め寄ってくる。


「ロナルドに紹介されたんだよ。俺は魔法についてもっと学んだほうがいいってアドバイスを貰ってな。それでロイスさんに魔法について教わってたんだ」


「……そうなんですか?」


「そうだよー。ロイスちゃん、ロナルドのオジサマにカズキちゃんの事、頼まれっちゃったのー」


 あ、こいつ猫かぶりやがった。この喋り方が俺は好きじゃない。


「さっきの試合でも親切に解説してくれてね」


「それで仲良くアタイの試合を見てたんですね。二人して」


「ま、まぁな」


 少し気まずい空気が流れる。


「あ、カズキ様!」


 背後からアイリスの声がし、振り向けば大勢が控室に入ってくる。


「あれ? この方は王宮魔術師のロイスさんですよね? どうしてここに?」


「ああ、まぁ色々あってロイスさんに魔術を教わることになってね。息抜きに試合を見に来たってわけ」


「アタイの試合は息抜きなんですね」


 あ、言葉選びを間違えたか。


「すまん。言葉選びが悪かった」


「いいんです。どうせ見る価値もない試合でしたし」


「いや、とても勉強になったぞ。それにお前だってジムのことを褒めてたじゃないか。剣の才能があるって」


「……そうですけど、あのジムって選手、魔獣狩りに慣れすぎているせいか駆け引きが苦手みたいでしたし、準決勝の相手としては物足りないですね……次の決勝の相手がどんな人なのか期待します」


「そういや、次で決勝戦なんだよな。アイリス、次の対戦相手ってもう決まってるのか?」


「えーっとですね。フランさんの後にもう一つの準決勝戦があります。たぶん、もうすぐ始まると思いますよ?」


「そっか。まぁ相手がどんなやつにしろ、フランが負けるとは思えないけどな」


 俺がそういったタイミングで歓声が聞こえてきた。アイリスが言うとおり、これから試合のようだ。さっきの流れでいえば、インタビューから試合をして勝利者インタビューってところか。初めの歓声ってことは今頃、一人目の選手が舞台に上がったんだろう。


「これから試合する二人ってどんな奴なんだ?」


 俺の問いに答えたのはジェイドだった。


「一人目はゴードン・ダグラス様、二人目はハンス・フロン様ですね。ダグラス様はロト殿下の親衛隊の小隊長をなさっている方です。フロン様の方は私は聞き覚えがありません」


 他の皆もハンス・フロンという名前に聞き覚えがないらしい。


「フランは見てないのか?」


「どっちがどっちかは分からないが、大柄な男と細身の男、それからアイリスさんぐらいの背丈の女の子がいた」


 三人いたのか。女の子が俺達みたいな応援者かな?


「ダグラス様は大柄な方です」


 ジェイドが補足してくれる。


「ってことは、細身の男がフロンか」


 その時、一際大きな歓声が聞こえたかと思うと一瞬にして静まり返った。そして、再び大きな歓声が聞こえてきた。

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