異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第187節

「試合前に各選手に意気込みを聞いてみましょう!」


 実況兼司会の男が声に観客も色めきだつ。
 今更ながら、あの実況が持ってるあれってマイクか? でも、この世界に音響機械なんてないだろうから、あれも魔宝石の一部だろうか。


「まずはフラン選手から! フラン選手、何か一言をお願いします!」


「……アタイの髪一本、血の一滴まで主の物だ」


「ありがとうございます! フラン選手はこの試合でも無傷で勝利を収めるとのことです! 続いてジム選手! 何か一言お願いします!」


「今日はあの赤き獣さんと戦えるなんて光栄です! ガッカリさせないよう全力で挑ませてもらいます!」


「ありがとうございます! ジム選手は荒くれ者の多い冒険者の中でも丁寧で真面目だと評判の選手! その真面目な性格から鍛錬は欠かすことが無いとのこと! 両者共に実力者です! それでは試合を始めさせていただきます!」


 実況の合図とともに両者が見合う。


「始め!」


 直後、フランは弾けるようにジムとの距離を詰めようとした。しかし、再び弾けるようにサイドステップで何かを躱すような動きを見せた。その直後、フランが居た地点が何かの衝撃を受けたように小さく砂煙をあげた。良く見れば、ジムは片手剣を振り下ろした格好をしている。


「出ました! ジム選手の八剣の閃刃! 彼が操る武器のリーチは見た目を超え、遠くに斬撃を発生させます!」


「ロイス、あれも魔術の一種なのか?」


「そうね。ロイスちゃんに言わせればあれも魔術の一つよ。フランちゃんが刀身に炎を纏ったあれも魔術。戦士は自らの技と言ったり技術と言ったりするから混同する人もいるけれど、現象としては魔術と変わらないわ。あの技の原理は簡単よ。手元の武器の刀身、それも刃の端部のみを魔力で延長させているの。魔力で刃を構成していて目に見えないから、斬撃を飛ばしているように見えるけれどタイミングさえ弾くこともできるわ」


「なるほど。弾くことができるのか」


「あの二つ名はそのままリーチをあらわしているのでしょうね。あの武器のリーチの八倍……六メートルから七メートルぐらいといったところかしら。あなたも研究者の端くれなら武器は手元より先端の方が威力が高い事は知ってるわよね?」


「ああ」


 基本的に威力ってのは質量と速度で決まる。武器の手元より先端の方が周速度が違うからそりゃ威力は違う。質量の方はどうなってるんだろうか?


「弾けると分かっていても弾けるとは限らないわ。見えない刃が非常に早い速度で襲い掛かってくる。それを受けるには冷静な判断力と度胸が必要よ。でもまぁ」


 ロイスの説明を受けている間にもジムの攻撃をフランは躱す。見えないはずの刃をジムの手元の刀身のみで推測しながら避けているのか。何撃目かの攻撃。それをフランは剣で受けた。


「度胸と判断力、それに駆け引きでフランちゃんに勝つのはあの坊やには少し難しいかしらね」


 フランはジムの斬撃を受け止めたまま、見えない刀身に自身の剣を沿わせて前進する。ジムは慌てた様子だ。魔力の刃を解いて白兵戦に対処しようとする。
 ジムの剣とフランの剣がぶつかり合い金属音を上げ、鍔迫り合いになる。


「ハァ!!」


 怒気にも似た鋭い声をフランが上げた。するとその刀身に赤い炎が宿り、その炎がジムを襲った。


「あっちー!!」


 ジムは鍔迫り合いに負け、バックステップで炎から逃れようとする。しかし、あの一瞬で服の一部が延焼したせいか、それだけでは炎から逃れることができない。


「くっそー!!」


 燃えた衣服を脱ぎさるが、その隙をフランは逃さなかった。
 ジムの腹部に肘鉄を食らわせ、悶絶して膝を折った所を足蹴にして俯せに倒し、燃え続ける炎に刃をあてがい消火する。


「勝者、フラン選手!」

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