異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第186節

 ロイスの後を追うようにして武闘大会会場に辿り着く。さすがに準決勝戦ともなれば大入りだ。たぶん、アイリス達やアンバー達も会場のどこかにいるのだろうけれど、探し当てることができない。


「ほら、詰めて詰めて」


 人ごみの中にいるのは俺達も同じ。ロイスが俺の隣に居て、ロイスが狭い狭いと俺を押しのけてくる。


「こういう時に魔術でどうにかならないのか?」


「あら、できないとでも?」


 ロイスはつま先で地面を二度蹴る。すると地面から水が湧き出て足場となり、俺とロイスを乗せたまま剥き出しのエレベーターかリフトのように上昇する。


「さっき見せた裏魔術の応用。不流水ながれずのみずよ。ロイスちゃんの手にかかれば水で作れない造形物はないわ」


「こりゃいいや。特等席じゃないか」


「ええ。席代として魔石を一つ貰うわね」


 そう言ってロイスが俺のポーチから手際良く魔石を取り出す。まぁ裏魔術は魔力の消費量が多いって言ってたし、それぐらいはいいだろう。


「いよいよ準決勝戦の始まりだー!!」


 ココ毎日この実況の声を聞いてるな。


「今回の対戦カードは皆が知ってる通り! 現役冒険者対元冒険者の組み合わせだー!! 最近の大会で準決勝戦まで勝ち進む冒険者が減ってきた昨今、これほど熱い組み合わせもない!!」


 すさまじい歓声が上がっている。フランが出場するということもあって、血の気の多い男共が俺達の足下で騒いでいる。


「一人目は赤き獣の名を馳せた元冒険者、フラン選手の入場だー!!」


 轟雷の拍手。あんなのを間近で聞いてたら耳が痛んじまいそうだ。


「今大会で優勝候補として出場時点から注目されていたフラン選手! その実力は確かなもので、この準決勝戦まで一切の負傷をしていません! 果して、フラン選手に一滴でも血を流せる者はいるのだろうか!?」


 フランは会場の歓声に応えるように手を振って見せ、その中でも一際目立つ俺達に気が付いた。
 あ、フランの目つきが少し険しくなった。なんでだ。近眼でもあるまいし。
 とりあえず、手を振りかえしてみたら俺に背を向けて剣を抜いて素振りをして見せた。


「二人目は魔人を討伐したことで八剣やつるぎ閃刃せんじんの名で知られるようになったジム選手の入場だ!!」


「ジム!?」


「あら、お友達?」


「いや、まぁ、そんなもんだけど」


 ジムってあのジムだよな。万屋猫目石で会ったあのジムだよな? な?
 こちらも拍手喝采だ。フランのファンからはヤジが飛ぶが、それでも選手両名を鼓舞する歓声は計り知れない。


「今までの五回戦中二回戦が不戦勝という幸運を味方に付けたジム選手! 幸運も実力の内というが、その戦闘技術は冒険者の中でも指折りとの評判! その刃の切っ先はフラン選手に届くかが試合のカギとなってくるぞ!」


 ジムが舞台に上がると更に大きな拍手が起こる。中には愛のある罵声が聞こえてくるのはご愛嬌だろうか。

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