異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第182節

 レオに通された部屋は執務室のようで、書類が積まれた机に肘をついたロナルドが座っていた。


「ようこそ。カンザキ君」


「二日ぶりか。武闘大会は順調に勝ち進んでるのか?」


「目的は果たしたのでね。君との試合を最後に棄権をしたよ」


 俺の負けた意味って……。まぁいい。


「そうか。ところで、あの時試合で話した魔法を教えるって話は本当なんだろうな?」


「ああ。もちろんだとも」


「なら、早速教えてくれ。ロナルド、さんが教えてくれるのか?」


「いや、私よりも適任がいる」


 ロナルドは立ち上がり、俺の横を通り過ぎ部屋を出ようとする。


「私に付いてきたまえ。君にとっての魔法の師となる人物を紹介しよう」


「……その人はどんな人なんだ?」


「王宮魔術師や宮廷魔術師と世間で言われているが、忠誠心の無い一介の魔術師。端的に言えば、己の研究のため、都合がいいからと国に力を貸し、対価として研究所や研究材料を与えられている人物と言ったところか」


「なんか、マッドサイテンティストな臭いがするな」


「カズキさんは一度、見たことがあるかもしれませんね。なんと言っても、あのフランさんと対峙した魔術師ですから」


「……あー……」






「あなたがカンザキ・カズキ?」


 すげーテンションが低い。あの舞台上でキラキラとした笑顔を振りまいていた人物と同一人物だとはとても思えない。


「あ、ああ」


「彼女はロイス・ヴァレンタイン。世間では『裏魔術の師』と呼ばれている人物だ」


「そういや、武闘大会でも言ってたな。結局、試合中に裏魔術ってのを見ることはできなかったけど」


「そうなのよね……。フランちゃんに裏魔術を使って驚いて欲しかったのに、私の方が驚かされちゃった……」


「ああ、悪かったな」


「……なんであなたが謝るの」


「あの仕掛けは俺がしたものだからな」


「あら、カズキはフランちゃんの知り合いなの?」


「知り合いって言うか、フランは俺の……まぁ部下みたいなもんだ」


「あら、そういうこと。あなたがフランちゃんのご主人様って訳ね」


 そういや、フランがそんなことをロイスに言ってたっけか。


「そういうことだ」


「ふーん。分かったわ。あなたに魔法を教えてあげる。ロナルド、レオ、二人とも戻っていいわ」


「ではロイス、カズキ君は任せた。レオ、行くぞ」


「はい」


 ロナルドとレオは退出する。その時、レオがちらりとこっちを見てウィンクをしてくる。これ程嬉しくないウィンクもないだろう。

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