異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第180節

 式典の三日目。
 スマホのアラーム機能で目が覚めた俺は伸びをしてから着替える。
 昨日は飯を食べてから酒盛りになって、屋敷にある酒類の半分ほどが消えたんだったか。
 食堂に向かうと既にジェイドが朝食を作っていた。


「おはよう」


「おはようございます。ご主人様」


「朝食は何だ?」


「パンとスープとチキンサラダです」


「ちゃんと水は気を付けて使ってるか?」


「はい。井戸まで水を取りに行かなくても済むので凄く助かってます」


 我が屋敷の厨房には水道水が詰まっているポリタンクの容器がある。もっぱらこの屋敷での飲み水はこれに頼っている。コックを捻れば水が出るのでアンバーなんかは目をキラキラさせていた。アイリスにも米を炊く時は必ずこの蛇口の水を使うように言い聞かせてある。この水の補充は俺の仕事だ。水を溜めるだけなら空気中の水分を凝集することでもできるが、その場合は空気中の雑菌やらなんやらが入った水になる。それは避けたい。


「それは良かった。そういや昨日はレオと会ってたって聞いたけど、何かあったのか?」


 俺はジェイドに背を向けたままポリタンクに水を入れつつ質問した。ジェイドにI.Gを見られないように気を配ったためだ。


「偶然会ったんですよ。式典中は人も多くなるので、揉め事が多くなるとレオ様がおっしゃっていました」


「ああ、警邏をしていたわけね。親衛隊副隊長って肩書でもやることは見回りなんだな」


 むしろ、こういった時だからこそレオはクリスの傍を離れちゃいけない気がするんだけどな。


「本当の所はクリスティーナ様の命令でサニングにいらした実力者をスカウトするためだと言っていました」


「ああ、そういうこと。にしても、親衛隊なんてそんなホイホイ入れるものなのか?」


「いえ、そういうわけではないらしいのですが……確か、魔族討伐隊に加入して功績を上げると親衛隊に正式に登用して貰えるらしいです」


「やっぱどこでも人手不足なんだな」


 非正規社員が一定の成果を出したら正規社員に雇いますみたいな誘い文句なんだろう。実際、どれだけの功績かを明確にしとかないと後々で揉めそうだけど。
 俺も来年から就活かぁ……このまま異世界で就職してしまうか……。いや、大学を卒業して学歴だけでも……。そもそも親父に顔向けできないし……。
 いかん。ファンタジー世界に現代の悩みはいかん。


「ご主人様? どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。お、そろそろ飯の用意ができそうだな」


「はい」


「それじゃ、俺が呼んでくるからジェイドは配膳をしててくれ」


「分かりました」

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