異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第178節

「フィル、この後は予定はあるか?」


「ねぐらに帰って酒でも飲むさ」


「ってことは特に予定はないってことだな」


「まぁそうだな」


「それなら俺らの夕食に顔を出さないか? フィルの分も用意してもらってる」


「夕飯を俺に?」


「ああ。市場にはあまり出回らない酒も用意してるぜ」


「……いいのか?」


「なにがさ」


「お前の奴隷達に俺の姿を見られても」


 そういや、フィルは窓から侵入してきたのは他の奴らに姿を見られないためだったのか。 


「そんなこと気にしてたのか。別にいいさ」


「そうか」


 フィルはあまり気にした風もなくそういった。


「正直な所、旦那が仕入れてくる商品ってのには興味があったんだ。多少はオルコット商会から流れてくるみたいだが、一部の品は貴族相手にしか売れない物もあるって聞いててね」


「あー、まぁそうだね」


 一番人気があるのは酒だろうか。この世界でも通用しやすい嗜好品は浸透するのが早い。セシルの話では容器が瓶のものが好まれているらしく、空になった瓶を収集するのが流行っているとかなんとか変なコレクターまで現れてるらしい。あとは調味料だろうか。一番食いつきが良いのは胡椒で貴族から上流階級あたりで流行っているらしい。見栄を張った者の中には一つの料理に辛くて食べられないほどの胡椒をかける者もいるとかなんとか。


「まぁ市場にも出してない物だってあるしな」


 今日はフランのためにと上質な肉を用意したつもりだ。それにオルコット商会には出していない酒もある。


「断る理由もないと思うけど、どうだろうか?」


「折角のご招待だ。夕飯はご馳走になるぜ」


「ああ。今は俺の奴隷に用意させてるから気長に待っててくれ」


「分かった」


 フィルはそう言いながら、俺の部屋を見渡す。フィルは物珍しそうに俺が持ち込んだ品々を手に取る。セシルもそうだったが、そういった物に興味があるみたいだ。
 フィルはそういった物品の中から一つ特に興味深そうなものを見つけた。


「これはなんだ?」


「それはハンディライト。まぁ魔力とは違う力で動く明かりみたいなもん」


 フィルからハンディライトを受け取り、電源を点けてみる。すると一際眩しい光を放った。


「へぇー。本当に魔力なしで動いてるのか」


「まぁね」


「これは便利だな。魔力も火も使わずに光が出せるってのは役立ちそうだ」


「別に魔術で光を出してもいいんじゃないか?」


「なんでもない時ならそれでもいいんだけどな。隠密行動の時は魔術を使えば敏感な人間ならすぐにバレル」


「バレるって何が?」


「旦那は魔術には疎いんだったか。魔術を使えば周囲に存在する魔力に多少なりとも影響を与えるんだ。人によってまちまちだが、周囲で魔術を使われると耳鳴りがしたり臭いがしたりする奴もいるらしくてね」


「じゃあ、魔力で動かない明かりってなると便利な物なんだな」


「そうだな。俺みたいな人間には重宝する」


「そうなのか。だったらこれはフィルにやるよ」


「いいのか?」


「その代わり、俺の依頼はきっちりやってくれよ」


「言われなくても」

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