異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第177節

「ロトの話だが、陽の魔力は活発、元気、熱情、そういったモノに作用する。で、激情とか怒りような感情にすら作用するってのが俺の情報筋からの推測だ」


「怒りも陽のうちなのか? 負の感情ってイメージが俺にはあるけど」


「負ってより、陽の対極は陰だからな。沈静とか冷静とかそういったモンになる。で、怒りは陽に分類されるんだろうな」


「ああ、そういうこと」


「ただ、おかしなことが一つ。もし、あの熱気がロトの魔術によるものだとして、どれだけ強い魔力を持っていてもあれだけの広範囲だ。全員にかけるなんてまず無理な話なはず。それに魔術に耐性を持っている人間でもあの熱気に巻き込まれたってんだから変な話だ」


 確かにあの舞台は広い。それに一人一人に魔術を作用させようと思えばその魔力量は計り知れないことになる。なんで俺にその魔術の影響が無かったのかも疑問を挟む余地がある。


「というか、人の感情に魔術は作用されるのか?」


「人によるがな。他人からの言葉に影響を受けやすい人間ほど、このタイプの魔術の効き目は強く作用する。逆に人の言葉に耳を貸さない我の強い人間には効きにくい傾向があるな」


 …………。


「あとはあの演説だな。魔族に対して恨みを持っている人間ほど影響が顕著に出る内容だったからな。家族や仲間を殺されたとか裏切られたとか、そういったモンを持ってる人間だな」


 なんとなく分かる。あの演説は全ての悪を魔族に背負わせるような内容だった。良いか悪いか別として、俺は魔族を知らない。だから影響を受けないと言われれば納得はできる。


「とまぁ俺が調べた限りではこんな所だ。もう少し調べてみるか?」


「いや、たぶんその推測は当たっている気がする……」


 当たっている気がするが、裏を取らせに行くか、それとも別の依頼を進めるか……。


「どうしたんだい? 旦那」


 少し考え込んでしまったか。


「次の依頼を頼んでもいいか?」


「えらく性急だな。新しい頼みごとなら、また別に料金を貰うぜ?」


「ああ。ロトの件を並行しつつ、新しい依頼は頼めるか?」


「優先度はどうする?」


「新しい方を優先で」


「分かった。で、どんな依頼だ?」


「フランの素性を調べてくれ。できるだけ客観的な物が良い」


「フランって旦那の奴隷の? 本人から聞けばいいじゃないのか? それとも本人に知られたくないのか?」


「やけに詮索するな?」


「気に障ったなら謝る。ただ、より良い情報を手に入れるための情報ってのは必須だぜ?」


「まぁそうか」


「で、どうする? 話せないなら、情報料も高くなる分多くの情報を用意するし、話すなら欲しい情報に絞って料金も相応になる。俺はどっちでも損はないから、旦那の懐次第だぜ」


「じゃあ、フランの冒険者時代の頃に限定しよう。それもフランが借金を作った原因のパーティー時代を特に」


「パーティに所属していた頃を中心にだな」


 女の過去を詮索するのは些か気が引けるが、これも必要な事だろう。なにせフランの事をまるで知らない。直接聞くのが筋だろうけど……まぁ話したくない事もあれば本人が忘れていることもあるしな。


「料金は?」


「そこまで難しくはなさそうだ。依頼料としては最低額の金貨一枚で請け負うぜ」


「分かった」


 俺は金貨を取り出しフィルに手渡す。

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