異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第176節

「セシル、その紙とペンはどうしたんだ?」


「これはリコさんから譲ってもらったんです」


 セシルはそういって俺に紙とペンを渡してくる。


「一応、契約書です。内容は簡単に言ってしまえば先ほどの商品を予約するというものです。そこの右下に直筆でサインをお願いします。あくまで商人同士の形式上のものですがね」


「契約書か」


 昨今、契約書の内容を見ずに契約するなんてザラだからな。


「アイリス、一応内容を改めてくれ」


「分かりました」


 アイリスは契約書を読む。アイリスは貴族育ち、教養は十分にあるだろう。


「セシル様の言うとおりの内容でした」


「ならいいや」


 アイリスから契約書を受け取りサラサラと自分の名前を書く。


「それでは、代金はこちらになります。それから明朝に馬車を手配しますね。積み荷のためそれなりの人数が来ると思いますがご容赦ください」


「ありがとう。馬車の件は分かった」


 俺はセシルから金貨を受け取る。これだけの大金を懐に忍ばせる事に慣れているのだろうか。


「じゃあ、ひとまず解散。後で食堂に集合で」


 俺の宣言で各自散り散りとなる。俺もまた自室に戻る。


「さてと」


 日も暮れ、昨日と同じぐらいの時間か。
 カツカツ。
 窓を叩く音。


「開いてるよ」


「おっと、今度は驚かないんだな」


「まぁ来るだろうとは思ってたから」


 フィルが窓を開けて入る。


「それで、金の方は準備してもらえたんですかね?」


「ああ。とりあえずはね」


 先ほどセシルから受け取った金貨の中から五枚を取り出してフィルに手渡す。


「毎度。じゃあ、早速だけど情報を話そうか」


「ん? 金を貰う前から調べてくれたのか?」


「まぁ半分は旦那を信用してたからな。旦那の事を少し調べれば金払いの良い客として少しは有名だぜ。特に奴隷にまで金を持たせて自由に食事や買い物をさせてるってちょっとした噂になってる程度だ」


「そんな噂があるのか……残りの半分は?」


「まぁ好奇心だな。旦那もロトが陽の魔力を持つ優秀な魔術師でもあるってことは知ってるよな?」


「ああ」


 身体能力の活性から治癒まで幅広い能力の持ち主だったか。


「あの集団の熱気、一つはロトの魔術によるものらしい」


「らしいってどういうことだ?」


「俺も魔術に精通してるって訳じゃないんだ。俺ができることは各分野に精通してる人間から情報を聞き出して、多角的な情報を統合するって事。情報屋が情報を自分の足で運ぶなんてまずしないからな」


「ああ。そういうことね」


「魔術に関しちゃソイツの言う事は信用できる。まぁ旦那はそういっても信用できないだろうけどな」


「まぁソイツを信用するアンタを信用するよ」


「面白い言い回しだな。でもまぁそう言ってくれると話が早くて助かるぜ」

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