異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第175節

 アイリスの呼び声。俺がドアを開けると、足音や話し声が聞こえてくる。


「セシル、そろそろ降りようか」


「はい」


 セシルは横になって着崩した服装を正してから俺を追って部屋を出る。


「みんな、おかえり」


 偶然なのか、全員が同時に帰ってきた。フランが少し赤ら顔なのは旧友達と酒でも飲み交わしたのだろう。


「ただ今戻りました。ご主人様」


 ジェイドが律儀にも腰を折って挨拶をする。それに比べ、アンバーの方は目配せだけで返してきた。


「あら、セシル様はこちらにいらしたのですか」


 ロージーが少し驚いた風だ。


「ああ。ちょっと新しい商品を手に入れたからセシルに足を運んでもらったんだ。そしたら、フランの試合が無くなったって聞いて、それならついでだから一緒にお茶でもしないかって誘ったんだ」


「そういうことでしたか」


「ロージーはセシルに何か用事があったのか?」


「えーっと、それは……」


「ロージーはカズキ様から聞いた話をセシル様にお聞かせしようかと思い、商会に訪問したんです」


「ハリソン!」


 少し恥ずかしそうにしてハリソンを肘でつつく。


「カズキさんから聞いた話ですか?」


 セシルが少し興味深そうだ。


「ああ、まぁ色々とね。アイリス、料理の下拵えは終わったか?」


「はい」


「なら、今日はジェイド、アンバー、アイリスの三人で料理を作ってくれ」


「私はいらないんじゃ……」


「いや、アンバーにはフランに出す料理を頼もうか。今日は特に食材にこだわってみたからな。いつも食べてるやつより上質な奴だぞ。厨房に立ってくれるなら、自分で食べる分も好きなようにしていいぞ」


「仕方ないわね」


 ちょろいな。


「それまで少し時間があるから、ロージーはセシルに色々と話してくれ。ハリソンとフランは……まぁ酒でも飲んでくつろいでくれ。俺は酒の味が分からないから、とにかく数は揃えた。好きなだけ飲んで、自分の好きな味を探してくれ。酒は食堂の壁際の棚に適当に並べてあるから」


「「ありがとうございます」」


 ハリソンとフランが礼を言う。フランはやっぱり少し酒臭い。


「カズキ様はどうなされますか?」


「俺か? 俺は一度部屋に戻る。配膳が終わったら教えてくれ」


「分かりました。ゆっくりくつろぎください」


 まぁさっきまで寝てたわけだし、くつろいでたら脳が溶けそう。


「あ、セシル。例の商品だけど代金は先に受け取れるか?」


「……そうですね。私とカズキさんの仲ですから、それぐらいは融通できますよ」


 そういってセシルは懐から紙とペンを取り出し、スラスラと何かを書き始めた。その時、セシルが取り出した紙とペンを見て俺は驚いた。それは俺がリコに売ったメモ帖とボールペンだったからだ。

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