異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第173節

 少しざわついた空気。心地よい暖かさ。まだまだ惰眠を貪りたいと願う朝……いや、もう夕方か?
 重いまぶたを開けないまた手探りで毛布を探す。ああ、今俺が抱きしめているのは毛布……いや、アイリスか?
 手探りでアイリスの髪を探す。しかし、なかなか見つからない。普段なら腰に腕を回せばすぐに手に絡みつくのに。
 というか、アイリスにしては体が大きくないか。


「あの……カズキさん?」


「ああ?」


 一瞬にしてまぶたが軽くなり、目がパチリと開く。
 目の前には顔を赤くしたセシルの顔があった。


「あれ……」


「……カズキさん、放してください」


「ああ……すまん」


 いつの間にかセシルを抱き枕にしていたみたいだ。どうにも、アイリスと一緒に寝るようになってから抱き癖みたいなもんがついたみたいだ。
 俺は起き上がり、伸びをする。そういや、誰か帰ってきたのか?
 随分と長い時間が過ぎたようだ。日も暮れ、腹が空いている。


「誰か帰ってきてないか見てくる。セシルはここでくつろいでて」


「え……あ、はい」


 セシルの返事を聞いてから、部屋を出て一階に降りる。


「誰か帰ってきたのかー?」


「カズキ様、かえっていらっしゃったんですね」


 俺の呼びかけに応えたのはアイリスだった。やけに手荷物が多い。随分と買い物をしていたようだ。


「ああ。他の連中とは一緒じゃなかったのか?」


「お父様とお母様は帰り道の途中、オルコット商会に寄ると言ったので、私が先に帰って夕食の準備をすると言って別れました。ジェイドちゃんとアンバーちゃんとも帰り道に会ったんですが、レオさんとご一緒していたようだったので遠慮して真っ直ぐ戻ってきました。フランさんは五回戦が不戦勝したということで空いた時間を昔の友人と一緒に過ごすらしいです」


「そっか」


 まぁあの夫婦、特にロージーがオルコット商会に行ったってことは何かの商売絡みだろう。双子の方は何かの定期報告か? フランの昔の友人というのも気になる。


「全員が戻ってくるまでは少し時間がかかるか……。とりあえず、アイリスには料理の下拵えでもしてもらうか」


「分かりました」


「そういや、今日は夕飯にセシルも来ることになったから、八人分の飯……いや、九人分を用意してくれ」


「九人分ですか? カズキ様、私、お父様、お母様、フランさん、ジェイドちゃん、アンバーちゃん、セシルさん……あと一人は誰ですか?」


「たぶん、そのうち来るさ。残ったら残ったで、俺の夜食にするからとりあえず作ってくれ」


「はい」


 アイリスは少し腑に落ちない様子だが、俺の指示に従い厨房に戻る。厨房には既に俺が用意した食材があるから、後は任せても大丈夫なはずだ。

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