異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第172節

 セシルを俺の部屋へ招き、菓子やお茶を用意する。


「これは良い陶器ですね。カズキさんが普段から金属のコップではなく、陶器製の物を使っているというのも頷けます」


 俺が気に入っている湯呑をセシルは褒めてくれた。
 昔から、旅行や遠出をするとお土産として湯呑を買うことが多かった。どれも高い物ではないが、使い易さやデザインの面白さ、バラエティに富んだ湯呑がある。その中でも、俺が気に入っている湯呑は寿司屋で見かけるような魚の字が入った漢字が一面にプリントされた凹凸のある白い湯呑だ。熱いお茶を注いでも表面はじんわりと暖かくなるような使い心地の良い湯呑だ。


「そういってもらえると嬉しいよ。まぁとりあえず一服」


 俺は湯呑に急須で茶を注ぐと、茶葉が開いた芳醇な香りとじんわりと体を弛緩させる湯気が立ち上る。


「ありがとうございます」


「俺が好きな茶葉だから、セシルが気に入ってくれるといいけど」


 抹茶入り玄米茶は俺のお気に入りだ。


「良い香りですね」


「ああ、それに苦みが無いから飲みやすいんだよな」


 俺も自分の湯呑にお茶を注ぎ、ズズズと茶を啜る。ホッ。


「セシルは飲まないのか?」


「いえ、頂きます」


 セシルも俺を真似てズズズとお茶を啜る。そういや、俺は普段から音を立てて飲んでるけど、アイリスとかフランは音を立てて飲んでたっけ? いいや、立ててないような気がする。まぁいいか。
 俺は一口で食べられるような菓子類をプラスチック製の食器に山盛りにした。


「まぁ食べてくれ。こっちが甘いやつでこっちが塩気のあるやつ」


 俺は塩気のある方のお菓子を手に取った。醤油せんべいとか、柿の種とかそういった類のやつだ。


「いただきますね」


 セシルは慣れた手つきで包装紙を剥ぎ、俺と同じ塩気のあるお菓子を食べた。


「あ、ゴミはこっちの器に入れといて」


「すみません」


 セシルは口元を隠しつつ、ゴミを空の器に入れた。


「やっぱり、こうやってお茶をする時間ってゆったりとして良い気持になるんだよな」


 そう言いながら俺は湯呑を傾け、お風呂に入った時のように身体が弛緩する。


「このお茶にはリラックスする効能があるんですか?」


「あー、そんなものもあったかもねー」


 リラックスモードに移行した俺は返事も少しおざなりになる。
 ポリポリ。お菓子を食べる。
 ズズズズ。お茶を啜る。
 ホッ。しあわせ。


「カズキさん?」


「あー、ごめん。なんか急に眠くなってきた……」


「どうしましょうか? 一度、お開きにしますか?」


「いや……うん。まぁ待て……こっち来い」


「はい?」


 俺の目はトロンとしてきて、視界が霞んできた。そういや、昨日寝る前にアニメを見て不眠気味だったのかもしれないな。
 俺はセシルの手を取り、ベッドに連れて行く。


「飯時になるまでちょっと寝ようや」


「カ、カズキさん!?」


 ベッドはもともと広いんだ。二人並んでも十分に寝れる。お茶を楽しんだ後に昼寝なんて贅沢なことだ。ここでセシルを追い返して昼寝をするようじゃ、招待主として失格だ。なら、一緒に寝ればいい。


「んじゃ、おやすみ」


 俺は大欠伸をして眠った。

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