異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第171節

「カズキさんが今住んでいる屋敷に来るのはこれが初めてですね」


「そういやそうだったか。まぁ入ってくれ。商品はこっちの倉庫にある」


 俺はセシル倉庫へ案内しつつ屋敷の方を見る。まだ誰も戻っていないようだ。
 倉庫の扉を開くと、セシルは少しだけ驚いた様子。それもそのはず、倉庫にはこれでもかという程の量の食材が入っている。


「一応、常温でも保存できる食材ばかりを集めたから平気だろうけど、早めに食べるにこしたことはないからな。できれば、今日中に引き取って欲しい。一応、何を仕入れたのかは目録にしてあるけど俺しか読めないからなぁ……」


 レシートを参考に適当にA4のレポート用紙にまとめただけだ。


「……さすがにこの量は多いですね……。以前に取引したものは以前の価格でいいですか?」


「ああ。取引したことがない食材だけなら、これとこれと、あれかな。値が付けづらいならリコさんも呼ぶけど?」


「いえ、それには及びません。食材の良し悪しの目利きができずして商人は務まりません」


 セシルはそう言って食材に歩み寄り、俺はサンプルとしての食材を手渡す。
 生で食べられる物は生で食べ、煮て食べる物は実際に煮て食べる。概ね評価は良く、ワサビのような評価の低い物は無かった。
 総額で金貨二十枚。売上としては十分だ。
 商会の方の手が空けば馬車を手配してくれるとセシルも確約してくれた。


「そういや、セシルはこのあとは暇か?」


「特に用事はありませんね。式典中は商会の忙しさとは逆に私は用事がありませんので」


「じゃあ、このあと一緒に舞踏大会でも見に行かないか?」


「舞踏大会ですか、そういえばカズキさん三回戦まで勝ち進んでいましたね」


「ああ。見に来てくれたのか?」


「いえ、そのタイミングは商談があったので見に行けませんでしたが、後から情報が耳に入ったんですよ」


「ああ、そういうこと」


「カズキさんの奴隷のフランさんでしたか。随分と健闘されているようですね。その方の応援ですか?」


「まぁそういうこと」


「あれ? でも五回戦の試合は無くなったはずですよ?」


「え。なんでだよ」


「相手が四回戦の負傷で五回戦の出場を辞退したため、フランさんの不戦勝が決まったんですよ。商会や会場では既に貼り出されていますが、カズキさんはまだ見てなかったですか? あ、すみません。カズキさんは字が読めませんでしたね」


「ああ、貼り出されてたのか。それすら気がつかなかったぜ」


「どうしましょうか? カズキさんは武闘大会を見に行くつもりでしたら、予定がなくなってしまったのでは?」


「そうだなぁ……無理に予定を作る必要もないし、屋敷でゆっくり休むかな。セシルもどうだ? お茶でも出すから、話し相手でもしてくれるか?」


「では、お言葉に甘えさせてもらいます」

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