異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第170節

 現代に戻り財布とI.Gを仕込んだカバンを手に取り、スーパーへと向かう。
 適当に自分達用の食材を買い込み、次に商品用にコストパに向かい食料を何往復もして買い込む。送り先は屋敷の倉庫。量としては馬車数台分だ。


「さすがに疲れたな」


 このタイミングでわざわざ金策するのは、単純に言えばフィルを雇うための資金作りと式典で食糧不足になっていないかという懸念の両面を解決するためだ。
 そして、今は馬車を操る人間が誰も居ない関係上、セシルと交渉してオルコット商会側の馬車を手配してもらう口実のために馬車数台分を用意した。一台だと何往復もしなければならない~みたいな感じで言えばセシルも無碍にはしないだろう。
 早速、異世界に渡りオルコット商会に向かう。
 式典の最中でも、というより式典の最中だからこその盛況か。人の出入りが途絶えることがない。


「セシル・オルコットをお願いします」


「あら、カンザキ様。いらっしゃいませ」


 いつもの受付嬢にセシルの呼び出しを頼む。


「少々お待ちください」


 しばらくするとセシルがやってくる。


「カズキさん。いらっしゃいませ。今日はどういったご用件でしょうか?」


「ちょっと食料を買い取って欲しいんだけど、馬車数台分になってて今は馬車を操れるやつが出払っててな。ちょっと馬車を派遣してもらいたいんだけど」


「ああ、そういうことですか。……そうですね、今すぐ動ける人間はいないので、私が今からそちらに出向いて査定しましょうか?」


「ああ。そういうことだったら頼む」


「今は馬車が出せないので、歩いてカズキさんの屋敷に向かいましょうか」


 セシルは商会を出始め、俺もそれについていく。


「今はそんなに忙しいのか?」


「はい。日中は忙しなく動き回っていますし、兄さん達も交渉事で随分と足繁く商工会に顔を出したり、貴族の方々と交渉をしたりと暇なしのようですね。式典が終わるまでは行商もできそうにないです」


 そういや、セシルは行商の修行中の身なんだっけか。すっかり忘れてた。


「その行商ってのはチャドさんも言ってたけど、修行の一環としてやってるんだよな?」


「はい。地方貴族との交流や他国との交流、様々な人脈を広げつつ、私自身の見識を広げるためです。チャド兄さんやクリス兄さんも通ったオルコット家のしきたりのようなものですね」


「クリス兄さんって一番上のお兄さん?」


「はい。今のオルコット商会を事実上運営しているクリス会長が私の兄、クリス・オルコットです」


「自慢の兄ってところか」


「そうですね。私も早くクリス兄さんの手伝いができるよう努めなければなりません」


 兄か。俺は一人っ子だったから、兄の気持ちも弟の気持ちも分からないけれど、クリスの表情を見るとなんとなく分かる。複雑な表情ながらも、兄貴の事を尊敬しているって風だ。
 そんな無駄話をしているうちに屋敷についた。

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