異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第169節

 フラン対ロイス。互いの駆け引きの末、軍配はフランに上がった。魔術による幾重もの策、それを覆したフランの戦術。どちらも俺にとってとても学ぶべきことが多い戦いの内容だった。


「ロイスちゃんびっくり。フランちゃんに惚れちゃいそう」


 チュッ。
 ロイスは背伸びをしながらフランの頬にキスをする。
 ああ、こうやって並んでみるとロイスって小柄なんだな。なって的外れな感想を抱いてしまう。


「すまないが、この身は既に主に捧げている。あなたの好意に応えることはできない」


「残念。もしも行く場所が無くなったらロイスちゃんの所においで」


 ロイスはそういって舞台を下りて行った。


「フラン選手、おめでとうございます。第四回戦を勝ち抜き、第五回戦への挑戦権を得て何かご感想をお願いします」


「主のために優勝を頂く」


「先程もフラン選手の口から出ていましたが、主とは誰でしょうか?」


「主の名はカンザキ・カズキだ」


「なんと、今大会に出場していたカンザキ選手がフラン選手の主だとは。それは金銭的な主従関係ですか? それとも男女の関係ですか?」


「それは言えませんが、主はアタイにとって尊敬できる人間の一人です」


「なるほど。カンザキ選手は三回戦敗退という成績ながら、その戦いは観客を沸かせ、どこか人の目を惹きつける。あの異国の情緒ある黒髪に惹かれる女性もいるとかいないとか」


 おい、その女性の連絡先を教えろ。


「お疲れの所、ありがとうございました。第五回戦までゆっくりお休みください。フラン選手、第四回戦突破おめでとうございました!」


 実況の区切りと共に再び拍手がフランに送られる。
 残りの試合もまだあるが、それよりフランに労いの言葉でもかけにいくか。


「俺は一度フランに所に行くけど、二人はどうする?」


「ロージー、私たちも行こうか」


「そうね。行きましょうか」


「よし、じゃあ決まりだな」


 俺は控室を通り、医務室へと向かう。途中、声を掛けられたが俺の顔を覚えていた運営の人間が親切にも医務室まで案内してくれた。


「あれ? カズキ様?」


 医務室に入るとそこにはアイリス、ジェイド、アンバーの三人が来ていた。


「お前たちも来てたのか」


「はい。アイリス様が試合をご覧になりたいとおっしゃったので」


 丁寧な物腰で説明してくれるジェイド。


「それで今は何をしていたんだ?」


 俺の問いにはアイリスが答えた。


「アイリスさんに治療をしてもらっていました。怪我らしい怪我はしていないのですが、体力の回復をしていただいています」


「そういや、魔力の方は大丈夫か? ハリソンは魔力切れは演技だって言ってたんだけど」


「さすがハリソンさん。あの演技を見破っていましたか」


「戦闘中であれば私も気が付かなかったでしょうが観客として見させていただきましたので」


「ご謙遜を。魔力の方ですが、アタイ自身の魔力はほとんど使ってません」


「それって、魔石を使ったってことか?」


「はい。連戦ですから、体力と魔力は温存しなければいけませんから」


「そっか。五回戦の方は大丈夫そうか?」


「ええ。アイリスさんの治癒で体力の方はかなり回復しました。次の試合まで休息を取れば次も十分に戦えるでしょう」


「そっか。おつかれ」


 俺は小ぶりな魔石をいくつか取り出す。


「予備で持っていけ」


「いえ、アイリスさんから十分な数の魔石を受け取りました」


「ああ、そういやアイリスは結局使う機会がなくなったからか」


「すみません……」


 アイリスが謝るが、俺はそんなアイリスの頭を撫でた。


「謝るな。お前は間違った判断はしてない」


 さてと、そうすると俺の出来ることなんてほとんどないか。


「そろそろお暇するかな。フラン、ゆっくり体を休めてくれ」


「はい」


「それと、さっきの試合でも結局怪我らしい怪我はしなかったな。よくやった。今日の晩飯はお前の好物を用意しよう。何か注文はあるか?」


「主が用意した食材をジェイドやアンバーが調理したものであれば全て私の好物です」


「そっか。じゃあ、今日はいつもより上等な肉を用意しよう」


「ありがとうございます」


「それじゃ、俺は買い物に出るから午後はハリソンとロージー、それからアイリスの三人で家族仲良くしてくれ。ジェイドとアンバーも姉妹でゆっくりしてくれ。それじゃ」


 俺は適当に別れを告げ、一度現代に戻った。

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