異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第168節

 周囲を蛇に囲まれたフラン。あれだけ数を減らしたはずの蛇も今では数十匹と数えられないほどに増えてしまった。


「フランちゃーん、もうそろそろ諦めたらどうかなー?」


 ロイスの勧告にもフランは耳を貸さず蛇を斬り増やしていく。


「でもさ、核の数に上限がある以上いつかは分裂しなくなるんだよな?」


「仮に上限があったとしても、結局のところ増殖しないだけで数は減らせません」


「じゃあ、核そのものを切ることは?」


「核とはあくまで概念的なもので、斬れば壊れるというものではないと思います。だからこそ、火の刀身でその核となる水を溶断する必要があったんだと思います」


「……じゃあ、打つ手無しってことか?」


「こうなれば、術者本人を倒すしか道はないでしょう」


「…………」


 そのことはフランだって分かってるはずだ。あとはどのタイミングでロイスに切りかかるかってだけだ。フランが初めにロイスに斬りかかったときは地を滑るように簡単に後方に逃げられた。だから、単純に切り掛ろうとしても単純な追いかけっこになることは目に見えている。あれだけの蛇を放置しながら逃げるロイスを追いかけるのは至難の業だろう。


「おーっと! フラン選手、蛇の牢獄から跳躍で逃げた! その先にはロイス選手が待ち構えている!」


「フランちゃん? 魔術も使えないのに空中に逃げるなんて気でも狂った?」


 ロイスは跳躍したロイスに目掛け、水球を放つ。水球は飛びながら蛇に姿を変えた。その時、フランの口元が笑ったのを俺は見逃さなかった。
 飛来する蛇。口を開きフランへ牙を向ける蛇。
 フランは盾を構え、蛇は縦に吸い込まれた。


「……嘘」


 ロイスの口から呆けた声がし、反射された蛇がロイスへと牙を向けた。


「キャッ!?」


 ロイスはステッキで蛇を振り払う。その隙をフランは逃さなかった。


「終わりです」


 ロイスの首元に刃が突きつけられた。


「……ロイスちゃんの負けー」


「これはなんということでしょう!? あれだけ劣勢に見えたフラン選手! しかし、最後に勝利したのはフラン選手でした!」


 実況の勝利宣言で会場はどっと沸いた。フランの名前を連呼し、拍手を送り、飛び跳ねる観客が多数。その中で俺もフランに拍手を送った。


「ハリソン、この展開は読めてたか?」


「……最初に盾を使わなかった時点で能力を隠したいという意図は分かりましたが、この局面で使う事までは読めませんでした」


「でもさ、あの反射の魔宝石だって魔力は使うぞ? 魔力切れなら使えなかったんじゃないか?」


「たぶん、あれは演技……だったんでしょう。相手を油断させるために自らを弱く見せるよう演じる兵法の一種です……が、あそこまで綺麗に騙せるものなんですね」


「とりあえず、フランの勝ちだな」

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