異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第167節

「フラン!」


 俺は思わずフランに声をかけてしまった。
 しかし、フランは俺に向かって口元でニヤリと笑って見せた。


「あれれー、魔力切れ? フランちゃんってば魔力が少ないのかなー? あ、そっかー。魔力が少ないから剣を持ってたんだねー。ごめんねー」


 ロイスは挑発すると同時に蛇をフランにけしかけ、フランはその蛇を最後の力を振り絞って煌めく刀身の下、切り伏せた。
 ――刀身は自らの輝きを失い、陽光を反射するただの剣となった。


「えへへー。これでフランちゃんも今までの人と同じだねー」


 残る数匹の蛇をフランにけしかけ、フランはその蛇を切り伏せる。しかし、炎を纏っていない斬撃は蛇の体を断つことができても、その動きまで断つことはできなかった。一匹の蛇が長さはそのまま、太さは一回り小さくなって二匹に増える。そしてその蛇は徐々に大きくなり、元の太さへと戻った。


「蛇が増えたぞ!?」


「……分裂ですね。そういえば、水球の状態の時も数を増やしていました……そういうことですか」


「そういうことってどういうことだよ」


「分裂した後に身体が大きくなるのは周囲の水分を取り込んだため。最初の噴水は周囲の水分を増やすため……ここまでの布石だったのですか」


「……そういうことか」


 あのロイスとかいう魔術師、口調こそふざけているが、きちんと頭回して戦ってるのか。


「となると、命令を伝える核となる水球とその周囲に纏う水の二重構造になってる可能性が……いえ、核までが分裂するとは考えにくい……おそらく、一つの蛇に複数の核を持たせ、身体が分裂し独立することで新たな蛇となるなのでしょう」


「最初から蛇を大量に用意するのと、後から分裂させるのはどう違うんだ?」


「初めから大量に蛇を用意すると短期的に大量の魔力を消費するため術者に負担が多くかかります。それと、分裂をしたように見せかけることで相手の戦意を削ぐこともできます」


「あのロイスって女の子、そこまで考えて戦ってるのか?」


「たぶん、そうでしょう」


 魔術のセンスって奴か。俺が咄嗟に考え出した魔術とは随分と違う。二重三重の意味があるのだ。


「フランさんにとって辛い戦いになりますね。魔力切れが起こったという事は身体の動きそのものにも支障が出始めます」


「……ハリソンの目算でどれぐらいだ?」


「……全力で動いて一分も持たないでしょう。上手く立ち回って三分ぐらいですか」


「…………」


 戦いの中での一分は長いようで短い。このままではフランの敗北は必至。しかし、フランは俺が声をかけた時に笑ったんだ。


「何か逆転の方法はあるか?」


「……ここから逆転は難しいでしょう。もちろん、奥の手を隠しているのであれば話は別ですが……」

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