異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第164節

「あなたが『紅き獣』のフランちゃん? カッコいいねー。たくましいねー。ロイスちゃん、ゾクゾクしちゃう」


 ロイスは武器であろうステッキをクルクルと回す。自身の身長より少し短い、一メートルと二十センチ程の長杖か。


「無駄口は結構」


 フランは右手にショートソード、左手に盾を構える。


「フラン選手、今大会で初めて盾を構えました! それだけの相手と判断をしたという事か!」


 アイツ、いままで盾を装備してなかったのか。


「ロイスちゃん、暑苦しいのは嫌いだなー」


 ロイスが杖を構え、舞台中央を指し示すと同時に間欠泉のような噴水が湧き出た。というか、どんな理屈であんなところから水が出てるんだよ。さすがに本物の間欠泉のように熱湯じゃないというところが救いか。


「少し、頭を冷やしたらどうかな」






「先に動いたのはロイス選手! どこから湧き出したのか、凄まじい量の水が噴き出しています! 場外を含め、舞台が水に沈むのは時間の問題か!?」


 舞台は四方を二メートル以上の壁に囲まれ、水の逃げ場は場外に敷き詰められた土の中しかない。それも吸水するにも限度があるだろう。このまま水が噴き出し続ければ実況の言うとおり、舞台は水に沈む。


「こけおどしはいい」


 フランはその噴水に一歩も引かず、むしろ一歩踏み込み、その噴水を薙ぎ払った。どういう理屈かはわからないが、噴水を薙ぎ払ったショートソードの刀身は濡れていない。
 凄まじい勢いで吹き出ていた水もフランの一太刀で途絶えた。


「わーお。凄い胆力。ロイスちゃんびっくり」


 まったくもって理屈は分からないが、あの吹き出ていた水の支配をフランの一太刀が解いた。という事だろう。
 フランは続け様にロイスに向かって一歩を踏み出し、間合いを詰めた。
 しかし、ロイスはバックステップし避けた。それも滑るようなバックステップ。よく目を凝らすと、その軌跡には水跡が残っている。あのロイスという魔術師は水使いらしい。


「ロイスちゃん、迫られらると逃げたくなるタイプなの」


 フランに向かってウィンクをするロイス。あからさまな挑発だ。


「…………」


 フランは四方に目をやり、構えを解いた後、ロイスを中心に弧を描くように移動する。


「あれれー、どうしたのかな?」


 ロイスが水の球を生み出し、フランに打ち出すもフランはそれを切り伏せた。
 盾使わないのかよ。


「もー、そんなにじっと見つめられるとロイスちゃん困っちゃうー」


 ロイスはそんなことを言いながらも幾数もの水球を生み出す。それはロイスの周囲を漂いながら、一つ一つの大きさは変わらず、分裂しながら数を増やす。
 数にして15個以上、20個未満か。
 ロイスはあれを一つ一つ制御しているのだろうか?


「フランちゃん、いっくよー」


 ロイスはステッキを新体操のバトンが如くクルクルと回し始めると、水球も同じようにクルクルと回転し始める。そして、フランとロイスを結ぶ一直線上を螺旋を描きながらフランに襲い掛かる。


「   」
 フランの口元が僅かに動いたかと思えば、フランの握る刀身が鮮やかな炎に包まれた。

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