異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第162節

 買い物も一段落つき、そろそろフランの試合が始まる頃かと思い二人を連れ武闘大会に向かった。
 二人の話を聞けば、二人共俺の試合の観戦もしていたらしく、アイリスやフランの試合も観戦していたらしい。


「どうだった? 俺の戦い方は?」


「一言で言えば、奇抜ですね」


 奇抜か。元貴族様に言わればそうなんだろうな。


「ただ、観客は盛り上がっていましたね」


 ロージーがフォローしてくれる。


「ハリソンは貴族だった頃は訓練とかしてたのか?」


「ええ。貴族として恥ずかしくない程度に剣術を身につけるため、お父様から教わりました」


「へぇー。ハリソンの父親って強かったんだ?」


「お父様は私よりもずっと強く賢く、優しかった。……今の私の不甲斐ない姿を見て、お父様はどうお思いになられるか……」


「こっちの風習でも墓参りってやるのか?」


「……墓石はありましたが、今頃はどうなっているでしょうか……」


「ああ、悪い事を聞いたな」


「いいえ、気にしないでください」


「…………」


 貴族の墓石ってぐらいだ。きっと敷地内にあったんだろう。でも、今では借金のカタで土地まで奪われたという話。もう、墓もあばかれてるかもしれない。


「いつか、行こうか」


「いつか行くとはどこへですか?」


「どこって、お前の親父さんの墓だよ。ハリソンの親父さんの墓って言えば、アイリスの爺さんの墓でもあるんだろう? 最低でも年に一回は行ってやらんと祟られても文句は言えねぇぞ?」


「いいんですか?」


「ああ。口約束で、具体的な日程も無いけどいつかは行く。任せとけ」


「……ありがとうございます」


「そういや、ロージーの親父さんは元気にしてるのか?」


「もういないわ」


「……そうか」


「……ええ」


 まぁ親父さんが生きてたら、娘が奴隷になったなんてこと知ったら、金の工面ぐらいするだろう。それがされてないってことは居ないってのは考えられた話か。


「お父様は海に出るのが夢だったの」


「海? なんで海なんかに?」


「元々、お父様は船大工になりたかったそうよ。海に出ても無事に帰ってこられる船を作るのが夢なんだってよく言っていたらしいわ。だけれど、お父様は造船よりも商売に才能があったみたいで、それならそれでもいい。立派な船を作れるぐらいに稼いでやるって商売を始めたらしいの。それで上質な木材を手に入れるためにハリソンの叔父様と知り合ったそうよ」


「海か……」


「お父様の功績によって、航湖術を航海術に発展させる基礎となったらしいの……それで四度目の航海で戻ってこなくなったわ」


 沈没か難破か……もしくは魔族か。


「一度目、二度目は無事に帰ってきたの。だから、三度目の時も安心して見送ったわ。そして帰ってきた。だから四度目もきっと戻ってくる……そう思ったけれど、戻らなかったわ」


「…………」


「私がどんな気持ちで、アイリスを海向こうに行かせる気持ちかカズキ様に分かるかしら?」


「…………」


「それでもね。親の気持ちだけで子供の決意を鈍らせてはダメって思ったのよ? 私は私の気持ちを押し殺して、あの子を送るの。カズキ様のためにと言って、あの子は私のお父様を連れ去った海向こうに行くのよ? カズキ様、私からあの子まで奪わないでください。あの子を守ってあげてください」


 ロージーはそう言った。


「……ああ」

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