異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第160節

 俺は二人を連れだした。アイリスのことは既にアンバーに任せてあり、フランも武闘大会出場のため先に屋敷を離れている。
 今は買い物中、というよりロージーのショッピングに男二人が同伴しているというのが正しいか。


「昨日は二人でデートでもしてたのか?」


「昨日はロージーと一緒に買い物にでかけていました」


「へぇー、買い物か。何か買ったのか?」


「それが、ロージーは気になった品物を手に取っては元に戻して、結局何も買わなかったんですよ」


「ハリソンも何も買わなかったのか?」


「特に欲しい物はありませんでしたから」


「無いのか」


「私が貴族だった頃なら、美味い酒があれば買ったはずですが今ではカズキ様がお持ちになるお酒ではないと飲めなくなってしまって……まさか、貴族の頃より奴隷となった身の方が良いお酒と巡り合えるとは思ってもみませんでした。ロージーも同じようで、品物を見る際にもカズキ様がお持ちになる品々と比較しては元に戻すんですよ」


「それって……俺のせいでハードルが上がってるんじゃないか?」


 というより、贅沢になってきたのか?


「そうかもしれません。野菜一つにしても甘みが違いますから」


「あー……そうかも」


 こっちの食事を全くとらないわけではないため、こちらの食材も少しは分かってきている。俺は現代の食生活に慣れきっているせいか、こっちの料理は基本的に味が薄い。ハリソンが言うとおり、野菜でも比較的甘みがなく、青臭さや苦みが強い。


「カズキ様のお国は本当に不思議ですね。技術力があるのに戦争が無く平和で、服や食事、さてはアイリスに下さった様な玩具まで」


「ああ、あれ見たのか」


「サボリスといいましたか。とても精巧にできていました。とてもリラックスしていて無防備な姿がとても癒されます」


「まぁあれぐらいの人形ならそうだな……食事一回分ぐらいの値段だな」


「そんなに安いんですか?」


「俺にとっては高いんだけどな。俺の気に入ってるキャラクターでもあるから、アイリスが気に入ってくれたら嬉しい」


 と、ここでハリソンはロージーの方をチラリと見てから俺の耳打ちをする。


「あれと同じものをもう一つ用意できますか?」


「ん? あー、あれと同じものっていうのは難しいな」


 ご当地キーホルダーだから、同じものとなると通販ぐらいでしか手に入らないか?


「まぁ少し探してみるけど、ポーズが違う物でもいいか?」


「はい。……実はロージーがあの人形を少し羨ましそうにしていたので、贈ってあげたいんです」


 できる旦那の鏡だな。


「ああ……そういうこと。分かった、できるだけ早く用意する」


「ありがとうございます」

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