異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第158節

 アニメの視聴もそこそこに就寝した。現代で眠るのは何日ぶりだろうか。こっちは敷布団だが、寝慣れた寝具はそれだけで心地いい。
 翌朝を迎える。


「さてと」


 俺は起き上がり、今日の予定を組み立てる。
 初日で武闘大会も敗退し、自由にできる時間が増えた。それなら、式典を楽しむのもいいだろうと考えた。ロンからの提案もあるため、近々訪れなければならないとも思っているが、まずは自分の身の回りの整理が先だ。昨日の今日だ。ハリソンとロージーとは改めて話し合わなければならないとも思っている。
 二人の本音を聞き出すなら、アイリスには席を外してもらった方がいい。どうせなら、ジェイドとアンバーにアイリスを混じらせ、チビッコ三人組で遊んでもらうのもいいだろう。
 フランの試合も見たいから、それも予定に加える。空いた時間の分だけ、色々とできることが増えた。
 俺は冷蔵庫から食糧を取り出す。肉類の中でも保存がきくウィンナー、それから卵、向こうでは常温でも保存できる野菜、玉ねぎやら大根やらを置いてある。時々、オルコット商会に野菜を下すことがあった時の一部を自分達の分として取っておいたものだ。
 俺の食事はアイリスが作ってくれることが多いが、あの屋敷のメンバー全員の食事を作るのはジェイドかアンバーの役割だ。料理をする頻度としてはジェイドの方が高く、アンバーは三回に一回ぐらいの割合だ。しかし、料理の腕自体はアンバーの方が高い。食への関心が高いためか、俺が持ち込んだ食材や調味料は一通り使いこなしている。ジェイドもアンバーの料理の腕の事は認めているようで、ジェイドがアンバーの事を褒めることがあるが、アンバーは素っ気なく「あっそ」と言うだけだ。
 俺は自室から食堂の奥にある厨房に食材を下ろすため向かう。すると先客がいた。遠目には分からなかったが、近寄ってみるとアンバーだった。


「今日はアンバーが作ってくれるのか?」


「ええ、それ以外で厨房に寄ることがあるかしら?」


「勝手に夜食作ってるだろ? しかも一人分」


「近所の犬に餌をあげてたのよ」


「美味そうな湯気を上げて、貴重な調味料をふんだんに使った料理を食べるグルメな犬か?」


「ええ。とても美味しかったと尻尾を振って喜んでいたわ」


「なら、尻尾があるか確認する必要があるな」


 アンバーの尻に手を伸ばす。


「あら? ここのご主人様はメイドを手篭めにしようとするイヤラシイお人だったかしら」


「ああ、こんな所にほつれができてるな。今度、アンバーにも新しい服を用意しておこう」


「メイド思いのご主人様で私は幸せです」


 アンバーは棒読みでそんな世迷言を言った。


「冗談はさておき、アンバーはどんな服が好きなんだ? 好きな色とかあるか?」


「あら? 本当にくださるの?」


「ああ。覚えてたら用意するから、好きなデザインとか好きな色を言ってくれ」


「そうですね……。ご主人様の選んだものであれば何でも」


「いや、そういう冗談はいいから」


「冗談ではないわ。私もジェイドも与えられた物を授かり、授かったものを大切にする。そこに貴賎はないわ」


「……そうか」


 アンバーがわりと真面目そうに言ってるってことはそれなりに大事なことなんだろう。


「じゃあ、俺の方で選ぶけどいいんだな?」


「ええ。できれば、ジェイドの分も用意して頂けると嬉しいのだけれど」


「ああ。どっちかを贔屓したりはしないさ」

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コメント

  • ノベルバユーザー254917

    アンバーがつけあがりすぎ。

    0
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