異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第155節

 フランを除いたメンバー全員を部屋に返し、フランだけを俺の部屋に招いた。
 俺はベッドに腰掛け、フランにはサイドチェアに座らせた。


「フラン、試合の方はどうだった?」


 まぁフランは無傷でいるし、負けたという事はないだろう。


「主の命に従い、無傷で勝利した」


 少しだけ鼻高々といった様子。要するにドヤ顔だ。


「相手はどうだった?」


「相手になりません。冒険者という肩書きでしたが、二流ですね。なぜ三回戦まで上がれたのか不思議なくらいです」


「…………」


 まぁフランの実力をしっかりと見たわけじゃないから何とも言えないが、事実無傷で戻ってきてるんだ。相手が格下だった事は間違いないだろう。


「お疲れ。食後のデザートでもどうだ?」


 普段は携帯用のお菓子は飴玉だが、ここは俺の部屋。菓子類も多様に揃えている。
 適当にお菓子箱を開いて中を吟味し、チョコチップクッキーを手にとった。単純に俺が食べたい物を選んだ。


「まぁ労いの意味も込めて少しお茶にしよう」


 俺はアイリスを呼び出して二人分のお茶を用意させる。クッキーに緑茶という取合せだが、ここは俺の流儀を通させてもらう。俺は紅茶はあまり好んで飲まない。
 お茶を用意してもらったチップとしてチョコチップクッキーを手渡す。アイリスには通じないだろうが、俺は面白いと思った。
 クッキーの包装を解き、適当に紙皿に並べる。


「さてと、お疲れさん」


 俺は湯呑を掲げて労いの言葉を再度かける。


「ありがとうございます」


「明日から四回戦、五回戦、準決勝戦、決勝戦か。あと四回戦、頑張れよ。


「はい。ところで、主の体調はいいのですか?」


「ああ、平気だ。そういやアイリスの試合はあれからどうなった?」


「アイリスさんですか……。アイリスさんは不戦敗となりました」


「……まぁそうだろうな」


 俺の試合が終わってからそれほど間がない頃にアイリスの試合が予定されていたはずだ。なのに俺を屋敷まで運ぶとなれば、無理が生じる。


「アイリスさんを咎めますか?」


「まさか。アイリスは正しい判断をした。少なくとも、俺にとって良い判断をしたと思ってるさ。だから、俺は咎めるどころか褒めるぞ」


「そうでしたか。無粋な質問でした」


「いや、いいんだ。それよりもフランはどうしてこっちに来ずに試合に出た?」


 少し意地悪な質問をしてみた。


「仮にここが戦場で主が倒れ、アイリスが主を守るとするならば、私の役目は敵を片付けること。それに対し、背を向け主の傍にいる事は決して良い選択ではない。そう判断したからです。それに私が主の傍にいたからといって、何もできなかったでしょうから」


 そう言ってからフランはクッキーを口に入れた。

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