異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第152節

「旦那、ここを開けてもらいませんかね」


 フィルだ。というかコイツ、壁に張り付いてるのか?
 俺が窓を開けると、フィルは軽業師のような身のこなしで部屋にするりと入ってきた。


「いやー、三回戦は運が悪かったみたいですね」


「感想戦なら帰ってくれないか?」


「おっと、すまねぇ。旦那の気分を悪くするつもりはねぇんだ」


 フィルは片手で拝むように謝ってきた。


「どうせ商談だろ? アイリスが戻ってくるまでの時間なら付き合うぜ」


 アイリスがお茶漬けを用意するまで数分。


「ありがとさん。さて、商売の話だが旦那が俺に依頼を提示して、俺はその依頼に値段を付ける。その値段に旦那が納得してくれるなら料金は前払いをしてもらう」


「必要経費は?」


「必要経費? よくわからないが、後から追加で値上げすることは絶対にない。その代わり、依頼の遂行が無理だと分かったら、俺が受け取った額の半分と情報は渡す。これでどうだ?」


「……まぁいいか」


 特に文句はない。必要経費も含めた値段提示ってことか。


「なら契約成立だ。俺は旦那の支持に従うぜ。何か依頼はあるか?」


「依頼か……」


 俺は思考を巡らせた。今までで疑問に感じたこと、腑に落ちないことを探した。


「……ロトの魔法についてだ」


「ロトってあのロト・サニングか?」


「ああ。あいつの演説を聞いた奴らが全員正気を失ってた。その仕組みを調べてくれ」


「……なるほど。確かにそれは調べがいがありそうだ」


「依頼額はいくらだ?」


「……金貨五枚だな」


 金貨五枚か。この間までならポンと出せた額だが、今は現金が少ない。


「金は明日用意するから、明日から仕事を始めてくれ」


 俺の申し出にフィルはごねずに素直に頷いた。


「分かった。また明日来る」


 フィルはそういって窓から飛び降りた。その直後にアイリスが部屋に入ってきた。


「あれ、カズキ様。窓が開いてますけど、暑かったですか?」


「ああ。少し涼みたくなってな」


「でも、体を冷やされるのはよくありません。こちらを食べてください」


 アイリスはお盆に乗せたお茶漬けをテーブルに置き、窓を閉めた。


「ああ。ありがとう」


 俺はアイリスが用意してくれたお茶漬けに手をつける。ワサビがかかっており、海苔もまぶしてある。単なるお茶漬けと侮るなかれ、アイリスの気配りが行き届いった一品だ。


「アイリス。今日はよく頑張ったな」


「いえ……そんな」


 たまにはお菓子以外の何かをあげた方がいいか。というより、何かあげたいな。

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