異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第150節

「魔術について学ぶだって?」


「ああ。貴族が学ぶような上品な物じゃないがね。魔法使い、君の場合は魔宝石使いだったか。そういった者が戦場で生き残るための術を学ぶ機会を与えよう。君は曲がりなりにも私の隊の隊員。もちろん、強制はしないがね」


「…………」


 魔大陸に行く寸前でのこの申し出。俺は正直、チャンスだと思った。そして、直感的にこれを逃せば俺は魔大陸でひどい仕打ちを受ける気がする。なにせ、魔族は人類を敵視していてロナルドのような実力者がいるにもかかわらず、未だ魔族は潰えていない。この世界のパワーインフレ感を考えるとロナルド並に強い者やそれ以上の者がいるはずだ。ロナルドは間違いなく強いが、ロナルドが世界最強という訳でもない。俺はいつでも逃げれると高をくくっていたが、逃げれる保証はない。
 それに……。


「分かった……」


「そうか」


 俺の返事を聞いたロナルドは動かず、のように俺には見えたがたぶん残像。
 気が付けば俺は飛ばされていた。それも場外なんてレベルではなく、会場外。
 腹部に妙な圧力を感じた次の瞬間には観客が天に、空が地にあった。
 俺は混乱の中、風の魔宝石により空気抵抗を強化し失速。降り立ったのは会場近くの家屋の屋根。ここから三秒で復帰は無理だ。というか、滞空時間の時点で三秒は超えている。
 遠くでロナルドの勝利を告げる実況が聞こえた。もう、俺があの舞台に上ることはないだろう。


「三回戦敗退か」


 今まで部活をやったことがない俺にとって、○○戦出場とか○○戦敗退なんて経験はない。生まれて初めて公式の場で衆目の中戦った。
 わりとそれが慰めになった。
 最初の頃は人並み外れた力と魔宝石による補助、それがあれば簡単に優勝ができると思っていたがそう簡単ではなかった。むしろ、難易度としては最高レベルだ。


「チート系主人公にはさせてくれないか」


 わりと自分で自分をチート系の主人公のように思い、万能感に浸っていた。誰しもが俺を凄いと褒め、何でもできると思っていた。しかし、そう簡単ではなかった。確かに常人よりは力もあるし、金策の手段もある。しかし、それだけだった。


「……強く、なりたい……のかなー」


 俺は楽して生きていけたらいいと思ってた。強くなりたいなんて思わなければ、俺は金策をして金満生活を送ることだってできる。……ただ、負けるのは悔しい。


「ハァ……」


 溜息が出る。自分の気持ちが掻き乱されるようで落ち着かない。頭の中はクラクラするし、少し寒気もする。それに冷や汗をかいたせいか、服が妙に重い。何故か鉄錆に似た臭いもする。
 俺はその場を離れようと一歩踏み出したとき、足元、というより靴の中がねちゃりとしていた。


「……あ」


 俺は眩暈がし、屋根の上で倒れた。
 出血多量による貧血だ。さっきの戦いで傷が開いたらしい。

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