異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第149節

「展開!」


 支配下においた泥を舞台上に展開し、ロナルドの足場を奪う。
 厚み1センチ程だが、舞台全てを覆うともなれば体積にすればとんでもない量だ。そして、それに比例して魔力消費も増える。俺自身の魔力でないため、体感では分からないがかなりの量だろう。
 床一面に展開された泥は未だに熱を持ち、ポコポコと音を立て、周囲の熱を物理的に上げた。


「これだけの魔力放出……。魔石の補助か」


 何故かロナルドの周囲は俺の支配下に置いた泥が入り込めない。魔力はきちんと込めているはずなのに、それ以上は動かない。何かの力か?


「しかし、それだけ手広くすれば局所的にはかなりの手薄。簡単に支配権を奪われるぞ?」


「なに?」


 ロナルドの周囲だけ泥が避けるように動く。それは術者たる俺の意思に反し、むしろロナルドの意思の沿ったが如く。


「君のそれは対多の戦い方、対一の戦い方としてはお粗末だ」


 ロナルドは剣を構える。それはまるで明治剣客漫画に登場する鋭い突きを放つあの男の構えのようだ。彼我の距離は5メートル以上、それはロナルドが一足で詰める事の出来る距離。


「対一の相手に対し最も効果的な攻撃は、少ない力で的確に相手の急所を突く事、だ!」


 ロナルドは俺との距離を一気に詰めることなく、その場で踏み込み空を突いた次の瞬間、俺のベルトが切れた。
 漫画のようにズボンまで落ちるわけじゃないが、現代小道具や魔石を入れたベルトポーチは地に落ちた。
 冷や汗が流れた。


「ロン選手! いや、ロナルド隊長の鋭い突き! これがロナルド隊長の得意技、魔穿孔か!? こんな間近で見られるとはなんたる幸運でしょうか! その威力たるや鋼鉄の盾すら貫く威力! 不可視の剣閃は避ける事すら許さない! 」


「ふざけんな! なんだよ今の!」


 踏み込んで突いた瞬間と俺のベルトが切れた瞬間はほぼ同じ。少なくとも俺の体感では同時だ。あんなの避けられるわけがない。魔が作ってことは物理攻撃じゃないのか。障壁で防げるかも怪しいぞ。


「攻撃とはこういう物だ。君は搦め手が好きなようだが、相手を見て術は選んだ方がいい」


「チッ……」


 俺はポーチを拾い、ある程度の道具をポケットに入れ、残りは観客席にいるアイリスに投げ渡す。
 このジジイの実力は本物だ。しかも俺を殺すチャンスを何度も見逃されている。まるで遊ばれているような感覚。いや、このジジイの目的は俺の実力を見る事だったか。


「君は魔術についても未熟、魔法を使う発想こそ非凡だが基礎がなっていない。君がこの先、戦に身を投じる覚悟があるのなら一度、私の下へ訪れなさい」

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