異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第148節

 隊長って、あのレオの上司かよ! いや、今では一応は俺の上司でもあるけどさ。そういや、隊長の話って全く聞かなかったな……。


「おっと、バレてしまったようだね」


 ロン、もといロナルドはローブを脱いだ。


「挨拶が無くて悪かったな」


 俺は驚きを隠せないまま、詫びる気もなく形だけ詫びた。


「いいさ。私は気にしていない」


「そうか」


「ただ、やはり君の力は見ておかないといけないと思ってね。レオに頼んでこうやって機会を作ってもらった」


 あの野郎、そういう魂胆だったのか。


「それで、俺の力ってのはどうなんだ?」


「戦士としては三流以下だ」


「そりゃあな。俺は力だけの素人だし」


「ただし、魔法のセンスはある。荒削りだが、君を敵にしたくないと考えるものは少なくないだろう」


「それって、言外に鬱陶しいって意味じゃないのか」


「そうだね。私もただ歳をとったわけじゃない。魔法を使う者の相手がどれだけ骨が折れるかということも重々承知している」


 ロナルドは剣を構え、5メートルはある彼我の距離を一歩で詰めてきた。


「魔法を使う者に剣で勝つにはまず距離を詰めることが重要」


 俺は咄嗟に障壁を展開するが、ロナルドの突きはこない。


「そして、奇襲を仕掛け相手に単純な行動を取らせる。つまり君は今、私に動かされた」


 ロナルドは障壁の展開が解けたことが分かるかのようなタイミングで鋭い突きを放ってきた。障壁のクールタイムは当たり前だが溶けていない。


「クソが!」


 メイスを振るってロナルドの突きを防ごうとするが、その突きの速さに比べれば俺の防御はあまりにも遅すぎた。
 せめて、急所は避けなければと空属性の魔力弾を俺自身の体に打ち込んだ。
 まるでボウリングの球のような重量感のある物体が俺の体を弾き飛ばし、勢い余って場外まで転がった。


「ッ……クッ……」


 僅かな間だが、呼吸ができなかった。


「自らを傷つけてでも回避しようとするその咄嗟の判断。悪くはないが良くもない」


 実況のカウントが聞こえる。俺は這い蹲りながら舞台に戻った。


「ッ……ハァ……ハァ」


 なんとか呼吸ができる。ちゃんと耳も聞こえる。


「君は私に攻撃することよりも、攻撃を避けることを優先した。方法は悪くないが、結果が良くない。君は私の突きを避けることの代償として、そうして負傷した」


「……こんなの……負傷のうちに……入らねぇよ」


 まだ言葉を話すのは辛いが、ここは痩せ我慢で通す。


「痩せ我慢か。しかし、今の威力ですぐに言葉を話せるとは随分と頑丈な体だな」


「ああ、虚弱な体でもココでは頑丈さ」


 俺は体に走る痛みで何かが吹っ切れるのを感じた。


「もう近寄らせねぇ。あんたの足、奪ってやるよ」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く