異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第147節

 三度目の入場。
 夕方という事もあり、夕日が眩しい。


「今大会、注目株のカンザキ選手! パワー、スピード、そして意外性! 彼の試合を心待ちにしている観客は少なくありません! 今大会で最も破壊力のある攻撃は舞台を半壊し、舞台修復を行った王宮魔術師曰く『ここで戦争でも起こったのか?』とのコメントを頂いています! 一騎当千とは正にこの事、並の兵士では相手にならない!」


 黄色い声やむさくるしい声が無遠慮に投げかけられる。


「未だ底知れぬカンザキ選手と老練なロン選手、三回戦の全対戦カードの中でも一二を争う組み合わせだ! それでは第三回戦、始め!」


「では、お相手仕ろう」


 ロンは剣を抜いた。半身になり、右手に剣、左手は背に隠す。それはとても様になっており、明らかに誰かに師事して身に着けた修練の賜物であることが伺える。今まで戦った二人は言ってしまえば自己流でまだ隙があった気がする。


「お手柔らかに」


 俺はそう言いつついつも通りメイスを構え、たフリをして舞台を思い切り叩きつけた。


「おーっと! カンザキ選手! 前回とは違い、開幕から舞台の破壊を始めた!」


 俺は破壊した都度、その破片を土属性の魔宝石で支配下に置く。
 魔力の消費量の法則はある程度把握している。
 魔力の消費量は現象の規模、距離、時間が主な要素だ。
 この場合なら、現象の規模は瓦礫を支配下に置く、距離は最大でこの舞台の対角、時間は試合が終わるまで。
 瓦礫を支配下に置くとは動かすための準備、車で言えばエンジンをかけた状態、家電ならコンセントを差して待機した状態。この状態だと傍目には何も起こってないように見えるが、いつでも動かせる準備をしているということだ。


「ほう。自らの地の利を得るため、先手を譲るか。口調とは裏腹に頭を動かすタイプ、戦士というよりも魔法使いか策士のタイプかね」


 ロンは俺の事をそう評価した。戦闘中なのに随分と余裕だ。
 支配下においた瓦礫を摺り合わせ砂にする。瓦礫のまま動かすよりも、流動的に動かせ、造形もできる砂の方が俺的には使いやすい。それに砂を操る漫画キャラだっているし、技のレパートリーには事欠かない。
 そして空気中の水分を支配下に起き、凝集して水分を集めて砂と練り合わせ、泥にする。
「まだまだいくぜ!」
 俺の周囲を取り巻く泥を火属性の魔宝石により加熱する。すると泥は表面に気泡を作り、ポコポコと音を立て、泥を撒き散らす。
「単純な魔法の組み合わせだが、三属性ともなれば魔力の消費もそれなりだろう。やはり、君は戦士よりも魔法使いではないのかね?」


 魔力の欠片もない俺が魔法使いなわけないだろ。


「残念、俺は魔宝石使いだ」


 大気を支配下に置き、高温の泥を乗せた激しい突風を発生させた。


「おっと」


 ロンはステップで泥を回避した。というか、このおっさん。突風の中をステップしながら回避しつつ前進しやがった。
 突風で目深にかぶられたフードが脱げると、頬が少しだけこけたダンディな老紳士の顔が顕になった。すると、観客の声がざわついた。


「なんと!? ロン選手の正体はクリスティーナ親衛隊隊長、ロナルド隊長だったのか!?」


「え!?」



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